老後資金「4000万円」上方修正説は本当か?最新データで判明した“生活可能”年数Photo:PIXTA

「4000万円」の前提はインフレ率3.5%
直近家計調査を基に計算し直すと違う結果

 老後資金が2000万円ではなく4000万円必要になるという説が5月にテレビで紹介され、話題を呼んでいる。

 これは、2019年に話題になった「老後必要資金2000万円」という金融庁の審議会の報告書を基に、23年度の消費者物価上昇率(帰属家賃除く総合)の+3.5%が今後も続いたらどうなるのかをシミュレーションしたものだ。

 その結果、10年後には2821万円、20年後には約4000万円が必要になるという。

 だが23年度は生鮮食品を除いた消費者物価指数でも前年度比2.8%増と、上げ幅は、1981年度以来の伸びとなった前年度の3.0%より鈍化したものの依然として高水準だ。

 シミュレーションは、いわば歴史的なインフレがずっと続くという非現実的な前提でのものだ。

 もともと「老後必要資金2000万円」も、金融庁の金融審議会が長寿化の進む人生100年時代に金融資産の不足を生じさせないための提言を盛り込んだ報告書の中で取り上げられていたものだ。

 夫65歳以上、妻60歳以上の無職世帯の場合、公的年金を中心とする収入だけでは毎月5万円の赤字になるとし、今後30年の人生があるとすれば、単純計算で2000万円が必要と試算している。だが試算の前提となっている家計調査年報は17年のものだから、最新の23年データに基づけば、結果も変わってくると考えられる。

 老後資金を試算し直してみると、思わぬ結果となった。