コンサルティング業界でのキャリアに限界を感じたり、新たな挑戦に興味を抱いたりといった理由で、事業会社に転職するコンサルが増えているようだ。だが、転職に踏み切った「元コンサル」の中でも、明暗がくっきりと分かれている。ある人は、責任者として大活躍。ある人は、「賢いけど使えないね」と総スカンを食らっている。両者の命運を分けたものは何だったのか。独立系コンサルの現役経営者が徹底解説する。(森経営コンサルティング代表取締役 森 泰一郎)
コンサル出身者の「ハードスキル」は
事業会社で通用しない!?
コンサルティング会社は高年収であり、優秀な社員も多い。非常に刺激的で、やりがいがある職場環境だと言えるだろう。だが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う「DXブーム」が一段落した今は、かつてほど「業界全体がもうかっている」というわけではない。
その上、プロジェクトによっては激務となり、徹夜や深夜残業が当たり前にある。ある程度までは昇進できても、パートナーまで出世できる人は一握りだ。
そのためか、昨今はコンサル業界を離れ、事業会社に転職しようとする人が増えている印象だ。そうした人材を狙い、商社からベンチャーに至るまで、大小さまざまな企業がコンサル出身者を「新規事業開発」「経営企画」などのポジションで採用している。
独立系コンサル会社を経営している筆者のもとに、「コンサルから事業会社に転職したい」という相談が届くこともある。実は筆者は、かつて他のコンサルファームに勤務した後、いったん事業会社に転職。すったもんだの苦労の末に、4年で取締役まで昇進した経験がある。今はその経験を生かし、再びコンサル業界で活動している。
また幸いにも、筆者の周囲には、コンサルファームを経て事業会社で成功している友人・知人が多い。彼らと話をする中で、筆者は「コンサルを辞めて成功する人」には3つの共通点があることに気付いた。今回は、その中身を詳しく解説していこう。
本題に入る前に、前提知識について少し触れておく。コンサルには「分析力」「論理的思考力」などのハードスキルと、「協調性」「リーダーシップ」などのソフトスキルの両方が求められる。前者は業務を通じて、時間をかけて習得する能力だ。一方で、後者は個人の資質や特性、姿勢によって変わってくる。
コンサルから事業会社へ転職して成功するか否かは、後者のソフトスキルに大きく左右される。課題解決などに役立つハードスキルは、実は事業会社での活躍にあまり寄与しない。むしろ、「ハードスキルを生かして、事業会社のビジネスを変革しよう」などと意気込んでいる人ほど失敗する。それは一体なぜなのか。