眠れない夏でも「30分」だけ睡眠時間が増える、とっておきの方法があります。
そう語るのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

眠れない夏でも「30分」だけ睡眠時間が増える、とっておきの方法・ベスト1Photo: Adobe Stock

「もう少しだけ睡眠を増やしたい」

「もう少しだけ寝ていたいのに、勝手に目が覚めてしまう」

 夏になって朝日が昇るのが少し早くなったことで、自然に起きる前に勝手に目が覚めてしまう。
 そんな「ちょっと」だけ睡眠時間を増やしたい人に、寝る前にちょっとだけ運動時間を取り入れることが重要だと、ニュージーランドで行われた新たな研究で示されました。

 研究によれば、夕方にちょこっと運動を取り入れるだけで、睡眠の質が大幅に改善されることが明らかになっています。

 今日はそんな少しだけ睡眠時間を延ばすためのライフハックについて共有したいと思います。

「いい睡眠」のための習慣とは?

 その研究では、30人の参加者が4時間の夕方の座りっぱなしセッションと、30分ごとに3分間の軽い運動を取り入れたセッションを行いました。
 研究の結果は驚くべきもので、運動を取り入れた夜は、運動をしなかった夜よりも30分も長く眠ることができたようです

 しかも、研究で行われたちょこっと運動は特別な道具や広いスペースを必要としない簡単なもので、「YouTubeを見ながら」とか「家事をしながら」とか、簡単にできるのもポイントが高いです。
 そんな運動習慣をちょっと取り入れるだけでより良い睡眠がとれるのだから、とてもお得ですね。

実際にどんな運動をすればいいの?

 研究では、簡単なレジデンス運動、ようは筋肉トレーニングなどが取り入れられていました。

 しかし、おすすめの運動は、「椅子スクワット」「ふくらはぎの上げ下げ」「膝を伸ばして立つ運動」など、自宅で簡単にできるものがよいでしょう。

 たとえば、動画を見ながらのスクワット、その場で足踏みをしたりするだけでも十分効果があると考えられます。

 とにかく始めやすくて、「ながら運動」が効果的でしょう。

眠れるだけじゃない!健康へのさらなるメリット

 この研究では、ただ睡眠時間が延びるだけでなく、夕方の軽い運動が血糖値や脂肪の代謝にもいい影響があると触れられています。

 長時間の座りっぱなしはこれまで考えられていた以上に人体に悪影響であると考えられています。

 心臓病や糖尿病のリスクを高めると言われていますが、夕食後の座りっぱなしの時間に体を動かす習慣ができることで、これらのリスクも軽減できるかもしれません。

今日から始められる睡眠対策!

 もしあなたが「もっと良い睡眠を取りたい」と思っているなら、この研究結果は今晩からでも取り入れることができます。

 忙しい一日の終わりにちょっとした運動を加えるだけで、睡眠の質が向上し、全体的な健康も向上するならやらない手はないでしょう。
 最初は「続けられるかな?」と不安に感じるかもしれませんが、慣れてくると「ながら運動」が簡単に感じられるようになるでしょう。

 そんな「ちょっと」の運動が、あなたの睡眠を大きく変えてくれることを祈っています。

(本稿は、頭んなか「メンヘラなとき」があります。の著者・精神科医いっちー氏が特別に書き下ろしたものです。)

参考文献
Gale JT, Haszard JJ, Wei DL, et al
Evening regular activity breaks extend subsequent free-living sleep time in healthy adults: a randomised crossover trialBMJ Open Sport & Exercise Medicine 2024;10:e001774. doi: 10.1136/bmjsem-2023-001774

精神科医いっちー
本名:一林大基(いちばやし・たいき)
世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医
1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。