ダメな管理職は「自分で結果を出そう」とする。じゃあ、できる管理職は?
そう語るのは、これまで4300社以上の導入実績がある組織コンサルタントである株式会社識学の代表取締役社長・安藤広大氏だ。「会社員人生が変わった」「もう誰も言ってくれないことがここに書いてある」と話題の著書『リーダーの仮面』では、メンバーの模範として働きつつ、部下の育成や業務管理などで悩むリーダーたちに「判断軸」を授けている。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、注目のマネジメントスキルを解説する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

ダメな管理職は「自分で結果を出そう」とする。じゃあ、できる管理職は?Photo: Adobe Stock

あなたが「先頭」を走ってはいけない

 リーダーや管理職には、プレーヤーの気持ちが残っているものです。

 だから、部下やメンバーの働きぶりを見ていて、「なんで、できないんだ?」というネガティブな感情が生まれるかもしれません。
 つい、自分が結果を出して引っ張っていかないといけないと思い込んでしまいますよね。

 しかし、リーダーはつねに「一定」に部下を見る必要があります。
 あくまで「一定の環境」の中で競争が起こっている。その状態を保ちます。
 リーダーが感情で動いてしまうと、健全な競争が起こらなくなってしまいます

 そして、あなたが先頭を走る必要はないのです。

上から「全体を見る」ということ

「渡り鳥の群れ」を見たことはあるでしょうか。
 いちばん速く飛ぶ鳥が先頭になって、それにみんながついていっている。そんな姿です。

 ここで重要なのは、「先頭の鳥がリーダーではない」ということです
 リーダーは、さらに上から全体を見渡し、指揮する立場にいます。
 先頭の鳥は、部下の中のトッププレーヤーです。
 そして、先頭の鳥が速くなれば、群れ全体のペースも速くなります。

 競争している中で早く成長する部下が1人出てきたら、そこにチーム全体が引っ張られていく。これが理想のイメージです。

 伸びる組織は、先頭のメンバーとの差がどんどん縮まっていき、全体が成長していきます。
 伸びない組織では、リーダー自らが先頭の鳥となり、トッププレーヤーとしてチームを引っ張っていこうとします。

 プレイングマネジャーの場合、リーダー自身も飛ぶ必要があるからです。
 しかし、リーダーはトップになってはいけません。あくまでマネジャーとしての仕事を優先させるべきだからです。

「スキルの差」はあっという間に縮まる

 多くの仕事において、高度なスキルは必要ないことがほとんどです。
 もちろん、専門的で職人のような職種ではスキルが必要かもしれませんが、ホワイトカラーを中心とした会社員であれば、事務スキルもコミュニケーションスキルも、一定のところで高止まりします。
 そもそも人間の能力に、「そこまでの差はない」と考えたほうがよいでしょう

 経験を積み上げていくと、どんどん人間の限界値に集約されていきます。メンバーたちの差がなくなっていくわけです。
 そうすると、切磋琢磨が起こり、トップの座が何度も入れ替わるようになり、全体のレベルが上がっていきます
 どんどんメンバー間の差が縮まりながら、全体としては伸びていく。これが正しい成長の状態なのです。

 私たちは、数百人のコールセンターの営業成績の数字を分析したことがあります。
 そこでも、同じような結果が出ました。

 コールセンターで必要なスキルは、そこまで難しいものではありません。
 元々電話営業の仕事を経験していたような人が最初の頃は有利で、トップと最下位の差は大きく開いていました。

 しかし、話すことが苦手だと思っていた人も、やっていくうちにスキルを身につけていきます。
 口ベタな人でも一度コツをつかむと、ものすごい勢いで成長していきます

 組織がこのような状態になると、全体の成長スピードが格段に伸びる瞬間がおとずれます。
 そうなるように全体のステージを引き上げるのが、リーダーの仕事なのです。

(本稿は、『リーダーの仮面』より一部を抜粋・編集したものです)

安藤広大(あんどう・こうだい)
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモ、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)を経て、ジェイコム株式会社にて取締役営業副本部長を歴任。2013年、「識学」という考え方に出会い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2024年7月現在、約4300社の導入実績がある。主な著書にシリーズ140万部を突破した『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』(いずれもダイヤモンド社)がある。