人は突然、誰かから口撃されると、無意識に逃避、反撃、フリーズの3つの反応をする。これらは相手を刺激して争いを拡大させる。そんな時に本当はどうしたらいいか。それを教えてくれる本が、3万人に「人と話すとき」の対話術を指導してきた人気ファシリテーション塾塾長の中島崇学氏の著書『一流ファシリテーターの 空気を変えるすごいひと言――打ち合わせ、会議、面談、勉強会、雑談でも使える43のフレーズ』だ。今回は、同書から特別に抜粋。困った状況を打開するためのテクニックとして「返報性の法則」を活用するやり方を紹介する。

パンチにキスPhoto: Adobe Stock

突然の口撃で起こりそうなこと

 ケンカ腰の荒れた空気の原因は、当事者同士の対立に限りません。

 議論の当事者ではないのに標的になり、激しい言葉で〝口撃〟されることもあります。そして人は攻撃されると、無意識かつ瞬時に、3つの反応をしてしまいます。

●逃避(言い訳をする)
●反撃(相手やほかの人を責める) 
●フリーズ(黙る、ニヤニヤする)

どれもNG

 反応の言葉として代表的なのが、これです。

×「いや、私が言いたかったのは……」(言い訳という名の逃避
あるいはこれ。

×「申し訳ありません」(謝罪という名の逃避
×「違います!」(否定という名の反撃
もしくはこれ。

×「えへへ」(ニヤニヤという名のフリーズ
×(うつむいて)「……」(黙るという名のフリーズ

 これらはすべて、口撃されたときに自分の身を守るために出る反射的な言葉や態度です。

「パンチにキス」というテクニック

 そうするのは人間として自然なことです。しかし、いずれの反応に対しても、相手は反撃だと受け止めます。すると、両者の呼吸は速くなり、交感神経が活性化され、気がついたら不毛な争いに拡大している、ということが多いのではないでしょうか。

 たいていの相手は悪気がないので、争いを未然に防ぐにはこちらが反応的でない言葉を準備しておけばいいわけです。

○「言いにくいことをご指摘くださり、ありがとうございます」

 これは一種の訓練で、口撃されたら反射的に口に出るくらいにしておくといいでしょう。「パンチにキスをする」というイメージです。

 ファーストコンタクトは何よりも重要。しかも打ち合わせや会議だけでなくさまざまなシチュエーションで使える金言です。

厳しい口撃

不毛な舌戦を避けるために

 このひと言でお互いひと息つけるので、「口撃から不毛な舌戦が始まる」という事態は回避できます。

 さらに、感謝や意味付けでコーティングすると、より効果的になります。

●「今のご指摘には、大切なポイントがありますね」
●「ホンネを出し合える場になり、おかげで意義深い対話ができそうです」

 ファイティングポーズをとっていた相手は、パンチが「大切なポイント」と意味付けされ、そればかりか「おかげで」と感謝のキスまでされて、振り上げた拳を下ろすことでしょう。しかもその拳は、気がついたら自分の手とつながれているのです。

「あらためて、建設的なご意見をありがとうございます」

 最後を「ありがとう」で締めれば、相手は一番の味方になるでしょう。これは社会心理学で言う「返報性の法則」で、こちらが感謝すれば、相手も感謝で返してくれるのです。

 パンチにキス。私自身このひと言で何度も救われてきました。