多くの人が『人との対話』に苦手意識を抱いている。できればすべてメールですませたいという人すら。残念ながら「人と話すこと」をゼロにはできない。仕事となればなおさら。いったいどうやって克服すればよいのだろう。
答えは実はシンプル、あなたの発するひと言を変えるだけだ。周囲を緊張させたり、気持ちを萎えさせたりするNGな言葉から、その場の空気をあたたかくするひと言、自然な会話を生む言葉へと切り替えてみよう。
そこでいま話題を呼んでいるのが、3万人に「人と話すとき」の対話術を指導してきた人気ファシリテーション塾塾長の中島崇学氏の著書『一流ファシリテーターの 空気を変えるすごいひと言――打ち合わせ、会議、面談、勉強会、雑談でも使える43のフレーズ』だ。
今回は、同書から特別に抜粋。シーンとしてしまったままの雰囲気の中で効果的なひと言を紹介する。

静まり返った会議Photo: Adobe Stock

熱い言葉+ひと言で空気をあたためる

×「遠慮なく意見を言ってください」

 空気が冷えていたら、発言を催促するのではなく、熱い言葉を発して自分に暗示をかけましょう。ホンネが「ガチガチに緊張しています」だったとしても、あえて宣言するのです。

「この部屋の真剣な雰囲気のおかげで、私もだんだん調子が出てきました」

 言葉は気分をつくります。
 言ってしまえば気持ちが上がってきます。そしてその気持ちが伝染していきます。

 さらに、このフレーズを用いる際に使ってみたい言葉が、「おかげさまで」です。

空気をあたためたい

「おかげさまで」が貢献欲求を満たしてくれる

 人から認められたいと思う人間の「承認欲求」はよく知られていますが、『嫌われる勇気』で有名なアドラー博士は、人には「貢献欲求」があるとも述べています。

 これは「誰かの役に立ちたい、喜んでもらいたい」と強く思う気持ちです。たったひと言、「おかげさまで」を付け加えるだけで、参加者の貢献欲求がしっかり満たされるのです。

「あんなに空気が冷えていたのに、私たちのおかげでこの人は乗ってきた」と。

 貢献欲求が満たされると、みんなの参画意識が高まり、空気は一気に雪解けとなるでしょう。全員がだんだん“ノッてくる”わけです。

 キャンプで焚き火をするとき、最初に小さな火を起こし、それをクルクル回していると炎が少しずつ大きくなり、それが周りに燃え移り、ついには全体が燃え上がって大きな炎になる―そんなイメージです。

 参加者たちの小さな火が集まってできる炎は、巡り巡って場の空気を熱くしてくれます。

ともった小さな火をさらに広げる

 心にともった小さな火をもっと広げるための、別の言い方もあります。

●「目が輝いてきましたね」
●「声に力がこもってきましたね」
●「おっ、いいアイデアが出ましたね」

 参加者が自発的に、活発に発言してくれることが理想ですが、まずは自分が火をつけましょう。

「おかげさま」は、参加者に居心地の良さを感じさせて発言を促す魔法の言葉です。

●「今の意見のおかげで、思いついたことがあります」
●「今のお話のおかげで出てきたことを、お伝えさせてください」

 誰かと誰かの発言がつながり、貢献欲求が満たされた参加者は大いに盛り上がり、情熱も高まります。