当時、「ストレス解消」という言葉が流行しました。私は、「ストレス解消するにはどうすればいいですか」とよく聞かれて、そのたびに「解消なんかするな!」と言っていたものです(笑)。ストレスの大本を見つけ、それにどうやって立ち向かっていくか、どう乗り越えていくかを考えることが、「解消する」よりも大事だと思ったからです。結局、「幸福とは何か」を深く考えずにきたツケが、日本社会には残ったままになっているのです。

「毎日が人生の締め切り」と
意識して一日を有意義に過ごす

 それでは、「幸福な人」とはどんな人でしょうか。私が考える「幸福な人」の条件の1つは、「嫌なことを乗り越えていく力」をもっている人です。

 2011年3月11日に発生した東日本大震災やそれに伴う原発事故の被害と影響は甚大で、その後も新型コロナウイルスの感染拡大、熊本や能登半島での地震など、さまざまな災害が各地で起こっています。日常生活においても、もちろん人それぞれではありますが、いろいろな出来事が起きます。そのような苦難に直面したとき、物事をどう捉えるか。そこに、幸福な人とそうでない人を分ける道があるように思います。

 たとえば、嫌なことが起きたとき、それを「何か意味があるもの」と捉えることができたり、「困難なことは自分に課せられた課題」と受け止める資質をもっている。さらに、困難なこと、大変なことを「一種のチャレンジ」だと受け止め、「自分が成長していくための糧にしよう」と考える。このような、ストレスを上手に乗り切っていく「ストレス対処能力」が高い人が幸せな人ではないでしょうか。

 東日本大震災から約13年が過ぎましたが、南海トラフ巨大地震や首都直下地震などの大災害が懸念されています。こういう時代に生きていると、毎日が「人生の締め切り」のように感じます。誰にでも死という人生の締め切りは訪れますが、その日がいつ訪れるかがわからないため、人は「まぁいいか」と思って考えないようにしてしまう。だからこそ、いつも私は、「もし明日、人生が終わってしまうとしたら、いま何をしておくことが大事か」と考えるのです。