すると、「生き方の優先順位」が随分とちがってきます。「これはやっておきたい」とか、「こんなことで怒っている時間はばかばかしい」と思えるようになってくる。そうすることで、一日を有意義に充実させて過ごすことができるのです。

幸福密度の高い日々を得るため
行動に心を込めてみよう

「3.11」のそのとき、東京に住む友人のなかで一番冷静だったのが、乳がんのステージ4で闘病後、仕事に復帰している女性でした。

 がんが再発すれば、死につながる可能性は高い。つまり、彼女はいつも死に直面していることになります。ですから、とてもアクティブなのです。たとえば、「小澤征爾さんが長野で復帰コンサートをやるから」と、仕事の合間に夜行バスに乗って出かけたりする。「明日死ぬのなら、今日やっておこう」という気持ちでいるから、毎日の「生活密度」や「幸福密度」が、私たちよりずっと高いのだと思います。一日一日が人生の締め切りという感覚をもっていると、「何が起きても怖くない」と思えるのでしょう。

 また、別の友人で、南米のアマゾンに滞在し、そこで活動を行っている人がいます。彼女は、1年の半分以上をアマゾンで過ごし、その生活は常に命の危険にさらされています。そういう毎日を送るなかで彼女は、「朝日が昇って陽が沈むまでが『小さな一生』だと感じるようになった」と話してくれました。

書影『幸福力――幸せを生み出す方法』(潮文庫)『幸福力――幸せを生み出す方法』(潮文庫)
海原純子 著

 それでは、「幸福力」を高めるためには、どうしたらよいのでしょうか。

 まず提案したいのが、「幸せになろう」というビジョンをもつことです。たとえば、「幸せに過ごすために、今日一日は腹を立てないようにしよう」と決める。それが達成できたと思ったら、その晩に、「達成できた。幸福力アップ!」と自分で自分を誉めてあげる。

 もう1つ大事なことは、行動に心を込めることです。お茶碗を洗うことにも心を込めると、自分の感覚が全くちがってくるような気がします。

「思いを込める」ということは、いろいろなものを変えてしまう力があるのです。私はジャズのボーカリストとしても活動していますが、言葉を大事にして歌うと伝わるものがちがうなと感じることがしばしばです。