名だたる企業をおさえて
就職人気ランキングで上位に

 このようにTFAは、アメリカで今、最も成功している非営利団体と言っていいだろう。2010年の全米就職人気ランキング(人文学系)で、TFAはグーグルやアップル、ディズニーといった名だたる大企業を押さえて1位になった。翌2011年、2012年もランキング3位に入っている。今どきの「理想の就職先」として学生のあいだに認知され、定着しているのだ。

 非営利団体というのは、日本では、あくまでもボランティアの延長だとか、時間やお金に余裕のある人たちがそこで働く、といったイメージが強いと思う。まさか、大学を卒業した優秀な学生たちが競って入ろうとする「就職先」が「NPO」だという状況はなかなか想像できないのではないだろうか。

 もちろんNPOだから給与がそれほど高いわけではない。しかし、そこに入る学生たちは、高額な年収が約束されるJPモルガンやマッキンゼーなどに合格しても、TFAを選ぶ。年間5500人の採用とはいえ、TFAに採用されるためには、非常に厳しい審査をパスする必要がある。ハーバードの卒業生5人に1人、約18%の新卒者がTFAで働くことを望むが、採用されるのは、そのおよそ10分の1。非常に狭き門だ。

選ばれる基準は
リーダーシップを持った人

 選抜で重要なのは「リーダーシップがあるかどうか」だ。リーダーシップといえば、日本では先頭に立って皆を率いるような「リーダー」としての素質のことをイメージする人が多いと思う。しかし、教育の現場で求められているのは、集団を引っ張っていく力というより、目標を設定、共有してその集団をまとめていくリーダーシップだ。

 選抜後、トレーニングを受けて最後まで残った人だけが、教育困難校に派遣される資格を得られる。トレーニングはだいたい6週間、研修所に泊まり込みで行われる。まったく初めての人たちとの長時間にわたるディスカッション、そしてミーティング、課題解決やリーダーシップの理論と実践、振り返り、チーム構築のやり方など、教師として必要とされる要素を学ぶ。アメリカは日本とちがって「教員免許」を持っていなくても教師になれる。だからこそ、教育理念や教えるスキルなどを徹底的に叩き込まれるのだ。

 こうして研修を終えた教師の卵たちは、各自治体へ派遣され、そこで働く場所が決まる。東海岸であるニューヨークに住んでいたのに、いきなりまったく反対の西海岸、カリフォルニア州に派遣されることもある。学校へは1〜2名が送り込まれ、2年間そこで教師として働く。たいていの学校には去年赴任したTFA所属の教師がいるため、2〜4名程度のTFA仲間がいる。