中国政府はSNSや金融取引の監視も強化
不満を持つ人が増え「負の連鎖」に向かう恐れ
現在、中国政府は「共同富裕」のスローガンを掲げ、富裕層から低所得層に政策的に富を移転し、経済の格差を縮小しようとしている。また、一部の企業は給与の上限を設定し、この政策に対応しようとしてもいる。それは国民のハングリー精神を減殺することにつながるし、自由を求めて海外へする人は増えるだろう。
中国政府は、改正した反スパイ法に基づいてSNSや金融取引の監視も強化している。中国は“超監視社会”であると分析する専門家は多い。権力の腐敗を撲滅するための取り組みにより、汚職の摘発なども増えた。6月、国防相経験者2人の党籍を剥奪するなど、国全体で監視を厳格化している。
一方、景気停滞が長引くリスクは高い。自由な発言や行動が制限され、常に誰かに見張られているような心理も、国民の海外脱出を増やす要因になるだろう。
改革開放以降、中国政府は経済特区を設け、海外企業を誘致し、国有・国営企業などに製造技術などを移転した。ITなどの分野では民間企業の設立を認め、市場原理を導入することで高い成長を実現した。それによって、政府に従えば豊かになれると考える人は増えてきた。
ところが、今の中国では、「政府に従っても豊かになるのは難しそうだ」と感じる人が増えているとみられる。これは中国にとって深刻な問題に違いない。
中国国内では自力で成功を手にすることが難しいと認識する人の数が増えると、共産党政権に対する不満、先行きへの懸念は高まり、経済と社会全体で活力は低下するだろう。政府は人々の不満を抑えるため、監視や汚職摘発を強化する。が、それによって、ますます不満を持つ人が増える、負の連鎖に向かう恐れがある。長期的に国民の海外脱出が続くと、中国の政策維持そのものが難しくなりそうだ。