支持率何%でしたっけ?

 あたらしい政策、あたらしい社会のために税を使いこなす、そんなしたたかな政治はいつになったらあらわれるのでしょうか。僕は日本の政治家を支配する「増税恐怖症」をとても残念に思っています。

 そんな病を治すための最後の処方せんを書いておきましょう。

 2019年に消費税率が引きあげられたとき、朝日新聞の世論調査で興味ぶかい結果が出ました。実施前と実施後で調査がおこなわれていますが、実施前は賛成が39%、反対が54%、自民党支持層にかぎっても両者はほぼ同じという数字でした。

 ところが、実施後の調査では、納得しているが54%で、納得していないの40%を大きく上まわり、自民党支持層にいたっては、納得しているの74%が納得していないの22%を大きく引きはなしました。

 数字にはさまざまな解釈の余地があります。でも、消費税にきびしい朝日新聞の調査で、増税実施後に国民の5割以上が納得していると答えたことは、同年に実施された参議院選挙で、増税を訴えた与党が勝った事実とピッタリ重なります。

 この予想外の反応のひとつの理由は、幼保無償化や低所得層の大学無償化という見かえりがあったからではないでしょうか。

 岸田政権では異次元の少子化対策が取りざたされましたが、その財源についての世論調査もおもしろいものでした。

 JNNの調査では「少子化対策の財源として消費税率を引き上げることについて」賛成が22%、反対が71%でした。圧倒的に反対が多いことがわかります。一方、FNNの調査では「少子化対策のために国民の負担が増えても仕方がない」という問いにたいして、賛成が48%、反対が48・9%でほぼ同じ割合でした。

 このちがいはどこから来たのでしょう。

 じつは、ふたつめの調査では、その前段で異次元の少子化対策で子ども関連予算を倍増することについて聞き、82.5%の人たちが賛成と答えていました。そのあとに財源の話をするたくみな順番が結果に影響したのではないでしょうか。

 以上の事実はふたつの可能性を私たちに示してくれています。

 ひとつは聞きかたひとつで結果が変わるのであれば、増税の実現可能性は、政治家の言葉の説得力にかかっているのではないか、ということ。もうひとつは、仮に聞きかたが上手ではなくても、少なくとも2割の人たちは賛成してくれている、ということです。

 自民党をのぞいて、2割の支持率をえている党はなく、それどころかすべての政党で1割にも届いていないのが現実です。そうであれば、堂々と財源の議論をする政党がひとつくらいあってもよいはずなのです。

 ここで僕の議論をもう一度思いだしてください。僕は子ども向けの支出にくわえて、医療や介護の自己負担の軽減、大学無償化の適用範囲の拡大、住宅手当の創設などを提案しました。受益者を子育て世代にしぼらないこれらの政策が示されていたら、「賛成だ!」と答えた人はもっと増えたのではないでしょうか。