「困った人」「ちょっと面倒な人」「難しい人」…グループ内で一人の人がこう感じられる場合、どうしているだろうか? その感情が本人にも伝わり、さらに関係が悪化する可能性がある。そんな時に本当はどうしたらいいか。それを教えてくれる本が、3万人に「人と話すとき」の対話術を指導してきた人気ファシリテーション塾塾長の中島崇学氏の著書『一流ファシリテーターの 空気を変えるすごいひと言――打ち合わせ、会議、面談、勉強会、雑談でも使える43のフレーズ』だ。今回は、同書から特別に抜粋。人間関係をうまく築くリーダーの言葉の選び方を紹介する。
苦手だという思いは伝わってさらに関係が悪化する
「この人、ちょっと難しいな」
「なんだかこの人、やっかいだな」
印象や偏見で人を判断すべきではないとはいえ、反射的にそうなってしまうことも多々あります。しかも、苦手だと感じているのは自分だけでなく、グループのほとんどの人がそう思っていることも。
やっかいなことに、こちらのそうした思いは本人にも伝わり、ますます気難しくなったり、やたらと突っかかってきたり。
たびたび不穏な発言が続くと、ついこう言い放ってしまいます。
×「わかりました。そういうことなんですね」
言葉自体は悪くありませんが、往々にして「もうやめてほしい」「やっかいな人だな」というメッセージが伝わってしまうリスクがあります。そうなると相手は、自分をちゃんと認めてもらいたくて、なおさら話が止まらなくなります。
心をほぐす言葉とは
困った人には、心をほぐす対策を兼ねたひと言で応じてみましょう。相手の発言の中にポイントとなる言葉が入ってきたら、それを繰り返すのです。
たとえば「私は大学時代にラグビーをしていたから……」と困った人が話し出したら、その部分にフォーカスします。
○「大学時代にラグビーをしていたんですね」
わざわざ口にするのは、「大学時代のラグビー」がその人にとって大切なことだから。ここを繰り返すと、「きちんと聞いてくれているんだ。尊重されている」という気持ちになり、心がほぐれやすくなります。
会議での話題に、「大学時代」「ラグビー」など、自分が言ったキーワードがどんどんタグ付けされていくイメージですね。こうなれば悪い気はしませんから、積極的にかかわってくれるでしょう。
相手のキーワードの探り方
何がその人のキーワードなのか、どうやって判断すればいいのでしょうか。
初対面の人ばかりのミーティングでは、自己紹介がヒントになります。1つや2つ、「これは大切にしていそうだ」という言葉が入っているはずです。
思い出や経験に関するものとは限りません。以下をヒントに、見つけていきましょう。
特定の人物
「母」「会社の同僚の〇〇さん」「友人の〇〇さん」「長女」
具体的な場所
「〇〇県に出張」「〇〇にあるホテル」「〇〇ビルにある理髪店」
具体的な日時
「〇月〇日までに作らなければいけない資料」「今日の〇時までに家に戻る」「来週の〇曜日に病院に行く必要がある」
相手から頻繁に出てくる話題
「体調が…」「忙しい」
基本は、相手がその言葉を口にした直後に繰り返すこと。覚えておかなくてもいいし、自然です。「これは相当に重要なキーワードだ」とわかれば、話の流れの合間をぬってその言葉をはさみ込んでもいいでしょう。
「繰り返すだけで?」と思うかもしれませんが、アロマテラピーのようにほんのりと効いてきます。