株主総会2024

みずほフィナンシャルグループで唯一、「サステナビリティ・エバンジェリスト(伝道師)」の肩書を持つ金融マンがいる。米ゴールドマン・サックスで政策保有株の売却ビジネスに長年携わり、今年みずほ証券に入社した清水大吾氏だ。「資本主義を使いこなせば持続可能な社会を実現できる」と提言する清水氏は今年の株主総会を振り返り、ある変化の兆しを感じたという。それは一体何か。清水氏に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

競争原理を良しとする
資本主義は「使い勝手が良い」

――「資本主義を使いこなせ」と清水さんは著書や講演でおっしゃっていますが、具体的にどういう意味なのでしょうか。

 所有の自由と自由経済の中で競争してくださいね、ということが根本原理です。人間は決して競争が嫌いではない。人類がマンモスや他のヒト属との競争で勝ち残ったのは、競争を良しとする本能があったからです。

 競争原理を良しとする資本主義は使い勝手が良く、われわれの本能にフィットする部分があります。しかし人間はサボる生き物でもあるので、情報開示や競争がなければ不正が起きる。社会主義国家がそうであり、日本でもそういうことが起きていると思います。

 もちろんルールのない競争が、環境破壊や社会問題を起こしてしまった側面もあります。だからといって人間の本能にフィットする経済システムを変えられますかというと、おそらく無理です。使い方を間違えたという現実を認識し、資本主義をうまく使いこなす。そうすれば持続可能な社会を実現し、人間がより幸せになれるのではないかというのが僕の仮説です。

――その資本主義を使いこなせていない現状があるという認識ですか。

 そうです。使われてしまっている。皆が資本主義を欲望のまま使えば社会は良くなるという幻想を持ってしまった。新自由主義的な考え方です。しかし本来、経済システムの目的は人間の幸福であったはずなのに、GDP(国内総生産)だけが大きくなって不幸になることが起きてしまっている。

 資本主義は道具でしかない。それがわれわれに答えを与えてくれるわけではないという現実をしっかり見据えた上で、どう使えば人間の幸福に寄与してくれるかを考え直さないといけない。

 これは過去の偉人たちも考えてきたことです。二宮尊徳も渋沢栄一も道徳のある経済が大事だと言っていますし、皆がそう思っていた。しかし米国発祥の新自由主義的な考えが広まったが故に忘れ去られてしまった。

 われわれが過去に学んだ知恵を使い、どのように資本主義をうまく使いこなしていくのか真剣に考えるべきでしょう。ルールのない資本主義は脅威でしかありません。

昨年、東京証券取引所が資本コストや株価を意識した経営を上場企業に求め、経済産業省も「同意なき買収」を促す指針を出した。東証の要請によって株主提案が増え、敵対的買収も常態化しつつあるが、清水氏によれば、それらは、ある歴史的な文脈の中で起きているという。その変化を感じ取れない経営者はいずれ「レッドカード」を突き付けられる。次ページで詳細を聞いた。