

さて、そろそろ話を「かまい方」に近づけていかなければなりませんね。育ってきた時代背景と、コミュニケーション法の変容。ここを押さえておくことが、適度なかまい方の重要なポイントです。もういちど年表を見ていただき、部下の年齢をあてはめてみてください。「なぜ、話しが通じないんだろう」と思ったときに、話が通じない理由はわからないまでも、「話が通じなくてもしかたがないのかもしれない」とは思えるかもしれません。話が通じなくてイライラするだけであるより、よっぽど精神衛生面ではプラスです。
なぜ成長を急ぐのかがわかれば、新入社員に与えるエントリー・ジョブも変わってくるかもしれません。小さいときからケータイとネットを使って人づきあいをしてきた彼(女)に、社会人としての対人コミュニケーション能力を身につけさせるためには、少々、時間がかかるということも理解できるはずです。社会人としてのコミュニケーション能力を身につけさせる方法については、項をあらためて解説したいと思います。
暗く冴えない時代に育った若手たち。総じて会社に依存する気持ちが薄く、自分自身の成長を重視する世代であるとはいえ、もちろん個性はそれぞれ違います。
そこで適度なかまい方の大前提として特筆したいのは、「若手に対して関心を持つ」ということです。彼(女)が育った時代背景について解説したのも、その一環です。誤解を避けるために付け加えると、若手に対して関心を持つというのは、部下のプライバシーを詮索することではありません。
あなたと部下とは、会社の中でたまたま関わることになったわけですが、単なる上司・部下という役割でだけでつきあっていると、そのうち人間関係が袋小路に突き当たるのではないでしょうか。
部下の成長に力を貸すこと。その意識があるかないかで、若手のリアクションは必ず変わってきます。
成果主義の営業会社などは典型的ですが、部下が育つと自分の成果を奪われるかもしれない、そんなやつになんで仕事を教えなければならないんだ!という意識に満ちた会社があります。そういう会社は、3年で3割以上が辞める会社です。キャリア豊富な先輩として、もっと自信を持って相対してほしいと思いますし、いつまで最前線のプレーヤーでいるつもりなんだろう、と思います。会社のキャリアパスの問題もありますから、一概に上司世代だけを責めることはできません。しかし、会社の仕組みとして、ある一定の年代になったら、プレーヤーとしてのウェイトを下げて、部下の育成を重要な評価項目にするべきでしょう。
「こいつがオレの退職金を稼いでくれる。だから、こいつを育てる必要があるんだ」。私の部下育成についてのモチベーションの1つは、こんなことだったりするのですが。