SNS、チャット、メール……現代は、史上だれも経験したことのない「言葉の洪水」に襲われている。あなたも毎日、ペーパーワークに何時間奪われているだろうか? そこで、ビジネスパーソンに「簡潔化」の作法を指南する本が誕生、世界でベストセラーとなっている。全米25万部を超えた他、世界16か国以上で刊行の話題作『Simple 「簡潔さ」は最強の戦略である』より、内容の一部を特別公開します。

【今すぐやめて!】あなたの「人生の時間」を膨大に奪う不毛な習慣・ワースト1Photo: Adobe Stock

現代は、目に入る「言葉」が多すぎる

 私たちは起きているあいだはいつも、雑音や取るに足りない言動に惑わされている。さらにはベッドに入ってからも端末をいじっている。まさに現代の狂気だ。

 こんなふうに言葉のもやが深まった背景には、2つの根本的原因がある。1つはテクノロジーの発展、もう1つは私たちの根深い悪習である。

① インターネットとスマートフォンの登場により、突然、誰もがあらゆることを大々的に、いつでも瞬時に、しかもただで発信し、閲覧できるようになった。誰もが平等に、フェイスブックやグーグル、X、ティックトックを使えるようになったのだ。

 そして私たちは中毒になっている。

 思ったことはなんでもシェアできる。自慢したいときも、頭にきたときも、すぐに投稿できる。わからないことがあれば検索できる。どんなテーマでも、役に立ちそうな動画をすぐに見られる。

② ところが、人はメールや手紙、メモ、論文、記事、本などを、1980年と同じように書いている

 考えてみよう。私たちが使える時間は少なくなり、選択肢は増え、集中力はたえず乱されている。にもかかわらず、私たちは相変わらず昔と同じ数の言葉を吐き出している。あるいは、もっと多くの言葉を。何世代も前と同じ書き方をしているのだ。(中略)

「長文メールを書く」という不毛な行動
──長い文章は読まれていない

誰もが長い文章を書いている。言葉をやたらと使うことで、知ったかぶりをし、知性をひけらかそうとしている。これは仕事でも、個人的なメールでも、ジャーナリズムでも見られる。

▶私たちは、長さは深さや重みとイコールだと教えられる。教師はレポートの字数や枚数を指定する。雑誌の長い記事は重々しさの証しとされる。本の厚さは著者の知性の証しとされる。

▶さらにテクノロジーが、この長文至上主義の傾向を、膨大な時間を奪う致命的問題に変えてしまった。

 その結果、大量の言葉が浪費されている。

▶注意を払うべき仕事上のメールのおよそ3分の1が未読である。

▶大半のニュース記事のほとんどの言葉は無視されている。

▶世の中の本のほとんどの章は開かれることさえない。

 この問題はアメリカの大多数の職場でひどく深刻だ。アップルでも、小さな企業でも、スタートアップでも、社員の意識をいちばん重要なことに集中させるのがかつてないほど難しくなっている。

▶コロナパンデミック以降、どこでも仕事ができる世界が現実になった。一方であらゆる企業やリーダー、若手ビジネスパーソン、働きざかりの世代にとって、コミュニケーションが扱いづらく、頭の痛い問題になった。

▶これはどんな組織にとっても切実な問題だろう。分散化した世界において、活気ある組織文化を育み、明確な戦略を立て、スピーディーに実行するには、効果的なコミュニケーションが不可欠だからだ。

▶スラックの元CEOスチュワート・バターフィールドによれば、人件費10億ドル、社員数1万人の企業を想定すると、平均的な社員の労働時間の50~60パーセントは何らかのコミュニケーションに費やされるという。それなのに、コミュニケーションをアップデートさせるツールやトレーニングを誰も提供していない。

 私たちの誰もがとてつもない難題に直面している。

 この混乱のなかで、重要なことに注目してもらうには、いったいどうすればいいのか?

 解決策は、コンテンツの消費のされ方に自分を合わせること。自分の理想や、かつて正しかったやり方を押し通してはいけない。

 コミュニケーションの方法をすぐに見直す必要がある。

(本原稿は、『Simple 「簡潔さ」は最強の戦略である』からの抜粋です)