1人ひとりが学び続け
変化し続けることがDXの本質

 DSSの良いところは、DSS-Lを定義して「全てのビジネスパーソンがDXに必要な知識と技術・スキル、そしてマインドセットを持つべきである」としている点です。

 特に注目すべきは、経営者に至るまで、この標準が適用される点です。DXの推進は全社的な取り組みであり、トップダウンでのリーダーシップが不可欠です。経営者がデジタルリテラシーを理解し、積極的に取り組む姿勢を示すことで、組織全体が一丸となってデジタル変革を推進することが可能になります。

 私はDSS-Lの中でも、特に「継続的な学習意欲」に注目しています。多くのDX支援の依頼を受け、対応してきた私ですが、質問の中には「このくらい調べればわかるだろう」と思うことが多々あります。ウェブで検索することや、今ならChatGPTのようなAIに聞いてみることもでき、詳しい部下がいれば教えてもらうこともできます。しかし、実際には多くの人がそうせず、特にITに関しては「自分は知らなくてもいい」と思っているようなのです。

 DSSの中では、「知る/調べる」→「使ってみる」→「活用する」のうち、最初の「知る/調べる」はリテラシーとして、全ビジネスパーソンが行わなければならないことと定義しています。具体的には「DSS-Lに沿って、DXの必要性やデータ、デジタル技術について知り、DSS-Lでは扱っていない内容も含め、DXに対するアンテナを広げることができる。また、知らない言葉に接したときは自ら調べることで、DXへの知識を広げることができる」としています。

 学び、知ること。これこそがDXの本質ではないでしょうか。

 人はいくつになっても常に変化(進化)する。これを前提にして、個人も企業もキャリアや組織の成長を考えていくことが必要になっているのです。

(クライス&カンパニー顧問/Tably代表 及川卓也、構成/ムコハタワカコ)