企業はDSSを参考にすることで、DX推進に必要な人材の育成計画を策定し、各役割に適したスキルを持つ人材を適切に配置することが可能になります。これにより、技術の導入とビジネスモデルの革新を効果的に進め、組織全体のデジタル変革が促進されます。また、個々の従業員もDSSを活用することで、自身のキャリア開発に必要なスキルを明確にし、効果的に学習・成長することができます。

 事例として、ベネッセコーポレーションではDSSを基に7つの職種別スキルマップを定義し、人材のアサインや育成、採用に活用しています。また、資生堂インタラクティブビューティーでは、独自の人材育成フレームワーク「4Dサイクル」の下、約2年間でDX戦略を遂行するデジタル人材を3倍以上に増加させました。

DX成功に不可欠な「マインドセット」と
「性格」との違い

 DSSでは知識や技術・スキルだけでなく、「マインドセット」を重視しています。本記事の前半で「性格診断の結果は人材配置に適していない」と説明しましたが、ではDSSの中で重視されているマインドセットとはどういうもので、性格とはどう違うのでしょうか。

 マインドセットとは、個人の知識、能力、成功に対する基本的な考え方や信念を指します。マインドセットは、自己の意識や行動の変化を通じて成長させることができるもので、経験や教育を通じて変わりうる特徴があります。これに対して、性格は基本的には生涯を通じて安定しているとされ、個人の行動や思考の一貫したパターンを指します。

 DSSの中でマインドセットは、DXの成功に不可欠な要素として位置づけられています。デジタル技術の導入に対する積極的な姿勢、継続的な学習意欲、変化に柔軟に対応する能力などが、DXに必要なマインドセットとして以下の通り言及されています。

継続的な学習意欲:新しい技術や方法を常に学び続ける姿勢。DXリテラシー標準(DSS-L)では、デジタル技術の基本を理解し、最新の技術トレンドを追い続けることが求められる。

積極的な姿勢:デジタル変革を推進するために積極的に行動する姿勢。これは新しい技術を導入し、それを活用してビジネスプロセスを改善するためのマインドセットである。

柔軟な対応能力:変化に対して柔軟に対応できる能力。DX推進スキル標準(DSS-P)では、急速に変化するデジタル環境に適応し、迅速に対応する能力が重視されている。

協力的な態度:チームメンバーや他部門と協力して働く姿勢。自分が担う役割において、関係者間の協力を促進するためのマインドセットが重要である。