カニバリ上等!柳井氏の驚きの戦略
しかし、柳井氏の立場に立てば、「H&M」や「ZARA」が作り出した最新の流行を取り入れたファストファッション市場の取り込みが急務であったことは理解できる。
実際、柳井氏は「GUは海外戦略が大事」と述べており、GUこそが「H&M」や「ZARA」と戦うための柔道戦略であったと言える。
当時のGUは「H&M」や「ZARA」よりも低価格で、ユニクロよりも安価な商品を提供していたが、これ以上価格を下げることが難しい「H&M」や「ZARA」にとって、GUの登場は脅威であったことだろう。
もし柳井氏がGUを創設しなければ、日本市場での優位性は「H&M」や「ZARA」に食い荒らされ、ユニクロもその基盤が揺らいでいたかもしれない。
ネットスケープを撃退したマイクロソフトや、カニバリゼーションのリスクを承知の上でGUを育て上げた柳井氏の経営手腕は、経営に関わらない私たちからすれば簡単に見えるかもしれない。だが、実際には短期的に自らの首を絞めるような戦略であり、中長期的にも成功する保証はなかった。
そう考えると、彼らの決断と実行力には脱帽する他ない。