立場の上下にかかわらず
丁寧に接するのが大人の礼儀

 入居するビルの駐車場で、清掃業者の高齢女性が粗大ゴミを運んでいました。

「重そうだな」と思った瞬間、近くにいた若い男性がさっとやってきて「持ちますよ」と手を貸したのです。「なんと親切な若者だろう」と好印象。「たいへんそう」と思っても、さっと行動に移すことは、普段からそうしていないと意外にできないものです。

 彼はいつもビルの管理人さんにも「お疲れ様です」と丁寧に挨拶していて、以前から「感じのいい青年だな」と思っていました。だれに対しても礼儀正しく、やさしい人は、まわりへの敬意を感じるので、愛されるのです。

 上司や先輩、お客、取引先の社長など、自分よりも立場が上だと感じる相手に対しては、ほとんどの人が礼儀正しく振る舞うでしょう。しかし、部下やパート、下請け会社の人、宅配業者、タクシーの運転手、お店のスタッフなどに対しては、目を向けないどころか、失礼な態度をとる人もいます。

 とくに歳を重ねるほど「人によって態度が変わる」という人が目立ちます。自分のほうが「立場が上」と勘違いして、雑な言葉や態度を振り撒いてしまうのです。

 自分はうまく立ち回っていて、関係のない人にはどう見られてもいいと思っているのでしょうが、賢明な振る舞いとはいえません。どこかでだれかが見て失望しているし、蔑ろにされた人の恨みは、意外にしつこいのです。

 立場が上になるからこそ、だれに対しても失礼のないよう、丁寧に接しようとするのが大人の礼儀です。礼儀とは便利なもので、「この人にはどう接したらいいのか」といちいち考えなくても、人の好き嫌いがあっても、だれに対しても礼儀正しくあろうとするだけで、相手を不快にさせることはありません。

「だれに対しても丁寧に接すること」は、もっとも賢明な処世術でもあるのです。

立場が上になるほど、自分のほうから近寄って、挨拶をしましょう