第一に、具体的な金額を伝えることで、子どもたちは過度な期待を抱いてしまいます。また、子どもがその資金に依存してしまうこともあります。親の資産に頼ることで、自立心が損なわれたり、自分自身の経済計画が不確実になったりするリスクが高まります。いわゆる「スポイルする」という言い方でしょうか。

 親にとっての1万円と子どもにとっての1万円は価値が違うように、親にとってはそこまで大きい額ではないと思って具体的な金額を伝えても、子どもには大きなインパクトを与えてしまい、スポイルするきっかけになるのです。

 第二に具体的な金額を伝えた後、老後の暮らしに思ったよりもお金がかかったりして金額通りに贈与や相続ができなかった時に、子どもに不信感を抱かれてしまうリスクがあります(もらえるだけありがたいという考えの子どもならいいのですが)。

 よって、「私たちはしっかりあなたのことを考えているのだから、あまり期待せず自分の力で生きなさい」程度にしておいた方が良いでしょう。もしくは、資産家であれば資産管理会社に資産を集め、その資産管理会社の株を子どもに持たせるなど、「直接現金を渡す」というような生々しい現金に触れるような機会を減らす必要があると思います。

(2)「民主的に解決しよう」としてはいけない
遺産管理におけるリスクとは?

 また、自分の資産(遺産)に関して全ての子どもたちに相談し、民主的に決定しようとする方もいらっしゃいますが、これも間違いなく悪手です。

 隠し事もなく一見よさそうに思えますが、複数の意見が交錯することで、「船頭多くして船山に登る」状態になり、混乱や対立を招きますし、何も決まりません。例えるならウクライナ戦争に対峙する欧州とでも言いましょうか、それぞれ利害が微妙に異なるので、子供たち全員に民主的に相談することはお勧めできません。

 もちろん、親が「死んだら後は知らん」というスタンスを取ることも、非常に無責任であり、避けた方がよいです。このような態度は、子どもたちの間で遺産をめぐる争いを引き起こし、家族の絆を壊してしまう可能性があります。

 例えば、こんなケースがありました。