ある家庭では親が生前、死後の遺産分割について3人の子どもたち全員に相談をしました。独り立ちしている兄、結婚して家を出た姉、そして親と同居の弟がいたのですが、それぞれの意見を聞いて決めようとしたのです。

 しかし、子どもたちの間で意見が分かれ、遺言を作成することができず、結果的に親が亡くなる前にきょうだい間での対立が激化。親の死後、法的な争いにまで発展してしまいました。

 このような状況を避けるためにも、遺言の作成は親が自分自身の判断で進めるべきです。民主的なアプローチは良い結果につながらないでしょう。

(3)老後の投資で「一点集中」してはいけない
資産を10分の1にしてしまった人も……

 新NISAのスタートもあり、投資で資産を増やしたいと考える人も増えていることでしょう。ただ、ある程度現預金があったとしても、老後の資産運用においては避けたい手法があります。それは、「一点集中型の投資」。非常にリスクが高いのです。

 60代以上の年齢での一点集中型投資は、その投資に失敗した場合、取り返すことができません。例えば、テクノロジー株ブームに乗じて「エヌビディアに一択で投資する」というような戦略を取ることは、短期的には利益をもたらすかもしれませんが、長期的には大きなリスクを伴います。実際、エヌビディア株は最高値を記録した6月から2割超急落するなど、大きく変動しています。

 例えば、2000年代のITバブルの崩壊。当時のIT銘柄の代表格シスコシステムズは2000年のピーク時には株価80ドルだったのが、2002年には10ドル台にまで下落。アマゾン・ドット・コムも2001年にはピーク時の株価から90%以上暴落しました。こうしたITバブルの崩壊で、当時IT銘柄に一点投資していた人たちは一網打尽にされました。

 また、2008年のリーマンショック前夜、投資の一大ムーブメントはBRICS(当初はブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国で[BRICs])でしたが、ロシア株はご存じの通り、低迷しています。

 2011年の東日本大震災では、東京電力はピークの10分の1まで下落しました。公益株ということで老後の退職金で投資していた方も多い銘柄でしたが、悲惨な結果になりました。

 直近では、こんな例もあります。オール関西で吉村洋文大阪府知事も会見でたびたびアピールしたコロナワクチン開発のアンジェスは、ピーク時の3%まで株価が低迷しています。つまり、97%が吹き飛んだのです。