夏休みが終わればいよいよ入試に向けての仕上げの時期にはいってきます。どのようにして最終的な志望校を確定するのか、過去問はどのように進めればよいのか? 塾がお膳立てしてくれる最難関校はともかく、それ以外の学校を志望している子の親御さんは意外に情報がないといいます。子どもを本当に伸ばしてくれる志望校の見極め方や選び方、その志望校に合格するための効果的な「過去問対策」をやり方を、大人気プロ家庭教師の安浪京子先生が詳細に説明した『中学受験 大逆転の志望校選びと過去問対策 令和最新版』から抜粋して、そのノウハウの一部をご紹介します。

【カリスマ家庭教師が教える中学受験の志望校選び】学園祭見学に行ったら絶対に見るべきポイント・ベスト6Photo: Adobe Stock

学園祭見学に行って「あー、疲れた」で終わらないために!

学園祭や見学会は、生徒に質問ができるだけでなく、実際に校内に入ってナマの学校観察ができる貴重な機会です。ただぐるっと一巡りするのではなく、ポイントを絞って観察すると、より学校の特徴が見えてきます。

①職員室の様子
職員室が生徒に向けて開かれているかどうかを見るだけで、その学校の生徒と先生の関わりが見えてきます。「聖光学院(神奈川県)」は職員室の廊下側の壁がガラス張りになっており、生徒が中の様子を伺って、入るタイミングを考えられるようになっています。職員室の一角には椅子とテーブルが設けられており、先生に質問をしたり、話をしたりするためのオープンスペースや個別ブースがあります。いつでも気軽に先生に声をかけることができるようになっているのです。
また、「市川学園(千葉県)」の職員室の扉は基本的に開けっ放しになっており、休み時間は生徒が気軽に入ってきます。先生への質問や相談が終わると、職員室を出るまでに次々と先生たちから声をかけられるのも特徴です。
先生と生徒の距離を縮めるための“具体的な配慮”は職員室周りを見るとよくわかります。

②先生の服装
説明会では先生方はスーツを着ていることがほとんどですが、学園祭ではその学校のカラーが出ます。学園祭でも先生がスーツなのか、ジャージなど比較的ゆるい格好なのか。また、先生を見つけた時に、ちょっとした質問をしてみるのもおすすめです。聞く内容にもよりますが、その場で聞かれたことに先生がすぐに答えてくれるようであれば、個々の先生に裁量権があるとわかります。もし、「上の者(担当の者)に聞いて参ります」と言うようであれば、先生も生徒も上からの決定事項を待たねばならない、トップダウンで管理型の学校だとわかります。

③トイレ
銀行員が「融資先のトイレをチェックする」というのと同じで、細部に本質が表れます。ただし、コロナ禍以降は清掃自体を生徒にさせず、業者に外注している学校もあり、ここは家庭によって価値観の分かれるところです。
また、リニューアル共学校を見学する時には、特にトイレチェックは必須です。例えばもともと女子校だった学校が共学になった場合、男子トイレが非常に少ない、ということが多々あります。生活に必須の設備が手薄ということは、他もしかり。その学校の男子生徒が肩身の狭い思いをしているのが目に浮かびます。
トイレと関連して、最近の小学生はことに「きれいな建物」を重視する傾向にあります。そのため、校舎を新しく建て直した学校は人気が上がる傾向にありますが、そこだけで目くらましにあわないよう、内実をしっかりチェックするのは親の役目です。

④図書館
本好きな子は図書館が志望校選びの鍵を握ります。「恵泉女学園(東京都)」のメディアセンターは1階から4階までの吹き抜けで、その明るく開放的な空間は、いわゆる「学校の図書館」のイメージと大きく異なります。
中学で60冊、高校で100冊の課題図書が課せられている「中央大学附属(東京都)」では、高校図書館の蔵書が約19万冊(全国平均2.5万冊)と日本最大級です。
大学附属校は、たとえ図書館が小さくても、大学の図書館を利用できるという大きなメリットがあります。

⑤グラウンド
男子は特に、グラウンドに価値を置く子が多くいます。「武蔵(東京都)」志望の子に、志望理由を聞くと「グラウンドが広いから!」という答えがよく返ってきます。広いグラウンドがない場合は、試合ができる場所を求めて転々とすることも。運動系の部活に力を入れたいお子さんの場合は、グラウンドと部活の関係をしっかり確かめておきましょう。

⑥学食・売店
入試の必要な学校の多くは、お弁当が主流です。
素敵なカフェテラスがあっても、高校生しか利用できない、あるいは中学生も利用できるが、高校生のニラミが怖くて実際は使い辛い……という話は意外に多いもの。きれいな食堂・カフェテラスに惑わされず、実質的な話を収集しておきたいところです。
昨今は共働き家庭が増えている現状を踏まえ、お弁当が注文できるシステムを持った学校や、キッチンカーが校内まで入ってきてくれたり、給食のある学校なども増えてきました。

もちろん、この6つ以外にも見るべきポイントはたくさんあります。
ある方は「保護者のマイスリッパ所持率」にこだわっていました。ご家庭で譲れないポイントを持っておくと「あー、疲れた」だけの学園祭巡りではなくなります。

*本記事は、『中学受験 大逆転の志望校選びと過去問対策 令和最新版』(安浪京子著・ダイヤモンド社刊)から抜粋・編集して作成したものです。