多くの低学年向け塾は、
「家庭学習」を前提にしている

「大手有名塾に小学校低学年から入れているのだから、うちでは何もやらなくていい」というのは大間違いです。

 塾は、前述した2つの基礎力よりも、英語やプログラミング、発想を豊かにする教育、思考力の訓練など発展的な内容に触れさせることにフォーカスします。

 塾の先生たちも、計算や漢字といった分野の基礎力が必要なことはもちろん重々承知しています。それでも「毎日10分漢字の書き取りをやります」「毎日10分計算ドリルをやります」では、塾の特徴としてインパクトに欠けるので、そこには力を入れていません。

 もちろんまったくやらないわけではありませんが、週一回2時間のカリキュラムの一部でやる程度です。それだけでは計算力と漢字力をつけるには圧倒的に不十分なのです。

 こうした基礎力に特化して訓練してくれる場は、公文式など一部の塾に限られています。断言しますが、週1回2時間で、あらゆる分野を網羅する基礎学力、全部が身につくような魔法の塾は世界中どこにも存在しません。

「いや、中学受験の成功体験談で『毎日10分計算と漢字をしていた』なんて話は聞いたことがない」と思う方もいるかもしれません。有名私立中学に合格した家庭を取材した記事などでは、どのような知育をしたかなどが語られます。

 うちの本棚はこうですとか、6年生でもスポーツと両立していましたとか、こういうところに連れていきました、など各家庭で工夫していることや、知育については「ネタ」になりやすいのでよく語られますが、ポイントはそこではありません。

 そうした家庭でも必ず、計算力と漢字力を養う時間を取っているはずですが、当たり前すぎるので語られないし、誌面にも載りません。

 でも語られていないからこそ、もっとも深いところで子供の学力を支える土台となっています。有名私立中学に合格するための勉強方法として、基礎力の養成は、唯一、可視化されない要素だと言ってもいいでしょう。そこを分かっていないと、「低学年から塾に通わせているのに、学力が上がらない」と嘆くことになってしまうのです。