「2つの事件」から得られる教訓
会社と監査法人は信頼関係が命

 適時開示文書を読む限り、今回の2つの事件ともいなげやが取った行動自体は、正しいものであり、同社に非はないものと思われます。

 経理担当者として、最も大事なことは「決算のサプライズをなくすこと」です。

 経営者は投資家とのコミュニケーションで業績予測の未達、達成の要因を説明する必要がありますが、その際には事業の好不調の内容を説明すべきであって、小難しい会計論点の話を投資家にしても意味がありません。年度中に会社の最終利益がいくらくらいになりそうなのかを予測し、それを経営者に報告するのは経理部の役目です。

 そのために、経理担当者は監査法人と年度中に主要な会計論点を協議し、ある程度の着地点を見定める必要があります。

 ダメな経理は、監査法人と年度中に全く協議せず、決算になってさまざまな会計論点を監査法人から指摘され、業績予測から全く違う数字にさせてしまうことです。これでは経営者は投資家とうまくコミュニケーションができないため、経理部は経営者から叱責(しっせき)を受けるでしょう。

 ただ今回の場合は、いなげやは監査法人と協議の上、結論も握っていたはずにもかかわらず、監査法人から結論をひっくり返された形となりました。

 いなげやは、経理担当者として適切な行動を取っており、非はなかったと思われますが、結果としてサプライズが生じてしまいました。こうなると監査法人を信頼できなくなり、経理としての「決算のサプライズをなくす」という使命を果たせません。会社と監査法人は、信頼関係が命なのです。

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