野田佳彦氏が、もしかすると総理に返り咲けるかもしれない「奇跡の秘策」とは世襲議員が多い政界で、野田佳彦氏はホンモノの努力家だ Photo:JIJI

小泉進次郎氏と野田佳彦氏
「ホンモノの政治家」はどちらだ?

 自民党総裁選・ 大本命の小泉進次郎氏が、かつて学習院大学で講演をしたことがあります。

「『ほどほどの努力では、ほどほどの幸福も掴めない』という言葉を私はメッセージとして若い人に送りたい。ほどほどの幸福が掴めればそれでいいのか。内向きとか、草食系とか、言われていますよね。今の若い人たち」

 そして、英語もできなかったが、思い切ってホームステイしたという自身の体験談を続けました。この講演を傍聴したのは、『女帝 小池百合子』を書いたノンフィクションライター・石井妙子氏です。彼女はこう感じました。

「努力が大切というが、留学するカネも留学する先も、政治家という職業もすべては親からもらったものではないか」(『日本の血脈』)

 コロンビア大学大学院修了という立派な肩書を彼は持っていますが、例外中の例外と言われる「条件付き合格」し、TOEFLのスコアが600点に達するまでコロンビア大学内の語学講座で英語の授業を受けるルールで1年ほど英語を学び、2005年9月よりジェラルド・カーティス氏に師事して修士課程をスタートして、1年後の06年に政治学で修士の学位を取得しました。親のコネとカネがなければ、努力をしても、まず取得することは不可能な肩書なのです。

 精神科医の海原純子氏は「格差社会」の「見えないあげ底」という表現で、この手の人々の自慢話に警告を発します。自分は努力したと思っているが、実際には親や庇護者のお陰でその肩書や能力を得ただけで、貧しい家に生まれたらどんなに努力してもなれない地位なのに、まるで自分の努力で手に入れたように誤解して人に説教する……と。

 一方、立憲民主党の代表選の有力候補・野田佳彦氏は、党首への立候補宣言で「やたら改革もどきを言ってる、世襲の多い金魚たちに立ち向かっていくドジョウでありたい」と、自民党は世襲が多い政党だと批判しました。彼の経歴を見れば、小泉氏のような「見せかけの努力」ではない努力をしたことがわかります。

 父は、富山県の農家の6人兄弟の末っ子として生まれ、陸上自衛隊習志野駐屯地に所属した自衛官。母は千葉県の農家の11人兄弟の末っ子。野田氏は早稲田大学を卒業後、松下政経塾に入り、卒業後も家庭教師や都市ガスの点検員など、様々な仕事の経験を経て、1987年(昭和62年)に千葉県議になりました。選挙資金はカンパによる500万円、運動員は20代のボランティア約50人。60歳を超えた今も、平日は選挙区のどこかで辻立ちをして選挙区民と会話し続ける、ホンモノの努力家です。