イオンが食品スーパーの「いなげや」を子会社化すると発表しました。しかしイオンの食品スーパー部門における営業利益は2年連続で減益し「ほぼ半減」状態です。なぜ、利益が減る事業を拡大するのでしょうか。その裏には3つの狙いがあるのです。(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)
イオンがいなげやを子会社化
スーパー業界に激震
イオンが首都圏の食品スーパー「いなげや」を子会社化すると発表しました。現在の出資比率の17%を今年11月をめどに51%の過半数に引き上げたうえで、最終的には同じイオン傘下のユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)に経営統合する方針です。
イオン傘下の食品スーパー部門は売上高に相当する営業収益が約2兆6400億円と、国内最大です。USMHに参加するマルエツ、カスミ、マックスバリュ関東に加えて、マックスバリュ東海、中四国を地盤とするフジ、旧ダイエーの店舗や、小型スーパーのまいばすけっとなど、合計49社で構成されるのですが、今回のいなげやで50社目のメンバーが加わるわけです。
いなげやがイオンの連結子会社になる理由は、単独での成長に限界を感じたからでしょう。
歴史的経緯としては1989年のバブル当時、不動産大手の秀和に株式を買い占められる事件が起きました。バブル崩壊後、秀和の経営が行き詰まったこともあり2002年に秀和の株式をイオンが引き取り、業務提携が始まります。
ただ、それはあくまで資本問題の解決が主目的であり、その後の20年間、経営としては首都圏の独立したスーパーとしての成長を目指してきました。しかし、コロナ禍の発生、諸物価の高騰、DXへの対応など単独では解決が難しい経営環境に直面して今回の決断に至ったものと考えられます。
いなげや側の事情はこのように推察できるのですが、では、イオンの側の事情はどうでしょうか?