「業務とITをつなぐミッドフィルダー」を
事業部門に配置する

 ミッドフィルダーが必要なことははっきりしたが、人材サービスの会社だからこそ、事業とIT双方に明るい人材は貴重で、採用が難しいことは分かっていた。情シス部門内で事業部担当をアサインして優先的に対応することも検討したが、今後予定されているシステム改修の多さを考えると非現実的。そこで、事業部門側にミッドフィルダーを配置する方針に切り替えた。現場を知る事業部門のメンバーをリスキリングすることで、スムーズな業務改善が可能になると判断したのだ。

 さらに、DXにおける情シス部門と事業部門の役割を明確に分け、密に連携しながら協力し合える体制を構築。ノーコード開発ツールの「kintone」を導入するなど、事業部門が必要な業務アプリを自分たちで開発できるようにした。

事業部門は、営業生産性の向上、ノーコードツールやSaaSを活用した業務改善など、スコープを限定して自らDXを推進している。 提供:エン・ジャパン事業部門は、営業生産性の向上、ノーコードツールやSaaSを活用した業務改善など、スコープを限定して自らDXを推進している 提供:エン・ジャパン 拡大画像表示

 この戦略が功を奏し、事業部門が開発したアプリで業務フローを変革し、2020年には年間2万6000時間の削減に成功。これまでに開発したアプリは、2024年8月現在で、のべ6973個に上るという。

 高橋さんは、「事業部門と情シス部門の最適な役割分担は企業や状況によって異なる」と指摘する。エン・ジャパンの場合、「情シスだけに頼るのはもう限界」という共通認識に加え、高橋さんのようにITに一定の理解があるメンバーが事業部側にいたからこそ、このアプローチがフィットしたが、そういう人材がいなければ、採用を強化したり、アウトソーシングも検討してみるのも手だ。ただ、社内に比べて費用がかかること、後者は社内にノウハウが蓄積されにくく、自走を目指すなら工夫が必要であることも踏まえて考慮すべきだ。