事業部門からDX人材を発掘するにはどうしたら?
独自の適性テストを徹底活用

 次にエン・ジャパンが直面したのは、事業部門から継続的にDX人材を発掘・育成するにはどうすればいいのかという問題だった。同社は主に2つのアプローチを取っている。

 1つ目は、社内公募制度の活用だ。同社では年1回異動希望を募り、そのデータを蓄積。DXをはじめ、新たな挑戦がしたいメンバーを把握しやすくしている。

 2つ目は、全社員を対象とした適性テストの実施だ。「Talent Analytics」と呼ばれるエン・ジャパン独自のテストで、面接や書類では見抜きにくい知的能力や性格、価値観を詳細に可視化する。こちらは顧客向けのサービスとしても提供しているので、関心のある方は調べてみてほしい。

 テスト結果は、「主体性」「変革性」「持続性」「協調性」などの観点から細かく分析される。高橋さんの結果を例に挙げると、主体性と変革性が高く、持続性と協調性は低い。このような特性を持つ人材は、0から1を生み出す新規事業やDXの初期段階に適しているという。高橋さんは、「DXの発展段階によって必要な人材は変わってくる」と語る。ある程度軌道に乗ったら、周囲を見渡しながら業務を整理できるバランサータイプも必要だ。

高橋さんが自身の「Talent Analytics」の診断結果を見せてくれた。 提供:エン・ジャパン高橋さんが自身の「Talent Analytics」の診断結果を見せてくれた 提供:エン・ジャパン 拡大画像表示

 エン・ジャパンでは、この適性テストを健康診断と同じように毎年実施している。そのため、「昨年より主体性が上がった」「思考性が論理的になった」といった変化も見えてくる。

「人が育つときに何が重要かというと、セルフ・アウェアネス、つまり自己理解です。私の場合は、コミュニケーション能力の中でも意思伝達と論理的表現力が高いので、自分の意思を分かりやすく伝えるのが好きなんです。一方で、傾聴力に課題があることも分かったので、意識して間を取ったりして、演じています(笑)。自分の得手不得手を自覚した上で、得意を伸ばし苦手を補う。こんなふうに適性テストを利用しています」(高橋さん)