三井住友トラスト・ホールディングスの子会社、日興アセットマネジメントが設定する外国株投資信託に利益相反の疑いがある。問題の投信は「破壊的イノベーション」関連銘柄を投資対象とし、ピーク時の運用残高は約3兆円に膨らんだが、近年、運用パフォーマンスが急速に悪化している。一方、日興アセットは運用の外部委託先である米国の運用会社に出資し、多額の配当金を得ていた。また一部の投信では、外国投信を介在させることで顧客資金を日興アセットの営業活動に利用している疑いもある。(フリーライター 村上 力)
米成長株投資で新NISAにも採用
「女性版ウォーレン・バフェット」の凋落
日興アセットマネジメントは、三井住友トラスト・ホールディングス傘下で投資信託の開発などを行う、運用資産36兆円超の国内大手資産運用会社である。同社は2016年~21年にかけて、「グローバル・フィンテック株式ファンド」や「デジタル・トランスフォーメーション株式ファンド」など、破壊的イノベーションをテーマとする投信を14本設定している。これらは、純資産総額が数千億円の投信も複数ある日興アセットの看板商品であり、新NISAの非課税投資枠の適格銘柄でもある。
これらの投信は米国を中心とした外国の成長株を投資対象とし、日興アセットの米国子会社である「日興アセットマネジメント アメリカズ・インク」(以下、NAMA)が米ニューヨークに拠点を置く運用会社、アーク・インベストメントから助言を受けて運用することで、実質的にアークが運用する投信となっている。米国の巨大ITや新興企業の急成長が取り沙汰される中で、個人投資家を中心に多額の資金を集めた。
アークは大手運用会社を退社したキャシー・ウッド氏が14年に設立。瞬く間に運用規模を拡大し、20年には6兆円を運用する巨大運用会社に急成長した。
ウッド氏は投資先のテスラ創業者のイーロン・マスク氏と昵懇(じっこん)の仲で、米ファンド界で「ハイテク株の女王」「女性版ウォーレン・バフェット」と呼ばれる存在だった。
しかし米ハイテク株の下落を回避できず、21年を境に凋落。株資金流出が相次ぎ、金融情報のモーニングスターから「過去10年間で最も失敗したファンド」との烙印(らくいん)を押された。エヌビディアの高騰に乗り遅れるなど銘柄選びにも陰りが見え始めている。
その結果、アーク関連の投信のパフォーマンスは著しく低下している。基準価格が1万円を割ったファンドや、ナスダック指数を大きく下回る投信が多く、アクティブ運用の投信として成功しているとは言い難い(下図)。
だが、問題は別にある。
不十分な情報開示や日興アセットの利益相反行為により、投資家に損失を被らせている疑惑が、ダイヤモンド編集部の取材で判明した。次ページでその全貌を明らかにする。