ビッグモーター・金商法違反・カルテル…金融機関の不祥事に株主が厳しい目、トップ選任賛成率「70%割れ」企業も三菱UFJフィナンシャル・グループは株主総会で“炎上阻止”に追われた Photo:JIJI

高度なガバナンスが求められる金融機関。2023年度は大手銀行や損害保険会社で不祥事が続出し、会長や社長の選任議案に対する株主からの賛成率は前年度から軒並み低下した。(ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)

不祥事企業に株主の厳しい目
賛成率10ポイント超下落は当たり前

 2023年度は、金利上昇という金融業界にとってポジティブな変化があった一方で、業界関係者の耳目を集める不祥事が続出した年度でもあった。

 多くの金融機関で、純資産比で過大に保有する政策保有株式が問題視されている他、銀行業界ではPBR(株価純資産倍率)1倍割れが常態化している。ただでさえ投資家から厳しい目を向けられている上に不祥事が重なり、今年度は、大手金融機関の会長と社長の選任議案の賛成率が軒並み前年度から下落した(次ページ表参照)。

 中でも不祥事を起こした企業に、株主は厳しい評価を下した。

 三井住友トラスト・ホールディングス(三井住友TH)は、大久保哲夫会長の賛成率が前年から8.35ポイント低い71.07%、高倉透社長は同13.62ポイント低い70.04%で、危険水域である60%台一歩手前まで落ち込んだ。同社の持ち分法適用会社である資産管理銀行、日本カストディ銀行(CBJ)で発覚した不正が大きく影響したとみられる。

 CBJは23年6月、社内のシステム開発を巡り、元取締役による利益相反などの不正行為が認められたと公表。ところが元取締役は「疑惑」を真っ向から否定し、現経営陣と対立する事態に発展している。

 CBJは資産管理銀行という公共性の高い事業を行っているにもかかわらず、不正に関する調査報告書を公表しないなど、情報開示にも消極的だった。事態を重く見た金融庁はCBJと三井住友THに対し、銀行法に基づく報告徴求命令を出している。

 CBJはガバナンスの改善を目指し、監査等委員会設置会社への移行を決めた。だが、筆頭株主である三井住友THの代表取締役に対し、株主は依然厳しい目を向けていることがうかがえる。