疑惑の投信(中)Photo:PIXTA

三井住友トラスト・ホールディングス子会社、日興アセットが設定した米国株投信の運用パフォーマンスが悪化する一方、日興アセットは運用の再委託先である米運用会社から多額の配当金を得ていたことが明らかになった。さらに問題の投信について検証すると、投資家の資金が日興アセットの営業活動に利用されている疑惑も浮上した。その結果、投資家には税金コストが割高になるというデメリットが生じている。(フリーライター 村上 力)

謎のファンド・オブ・ファンズ方式
日興アセット「疑惑の投信」にメス

 日興アセットマネジメントが設定したアーク関連の投信は全部で14本あり、現時点で純資産総額は約1兆3000億円で推移している。

 これらの投信は、二つの形態で実質的な運用者のアークインベストメントに資金を委託。12本が「ファミリーファンド方式」、2本が「ファンド・オブ・ファンズ方式」だ。ファンド・オブ・ファンズ方式の本数は少ないが、1本当たりの運用規模が大きく、2本合わせて約7000億円と全体の半分に相当する。

 ファミリーファンド方式は、受け皿ファンドとしてのベビーファンドに投資家の資金を集約し、実際に金融商品を運用するマザーファンドに投資する。マザーファンドを外国の運用会社が受託することで、日本籍の投信でありながら中身は外国人が運用する投信を作ることができる。

 一方、ファンド・オブ・ファンズ方式は、日本の法令に基づいて設定された投信が、外国籍ファンドを買うことで実質的に外国の運用会社に委託するものである。この場合、投資信託協会の規則で国内籍投信は複数の投信を組み入れなければならない。そこで実務上は99%を外国投信、1%を安全資産に投資するマネー・マザー・ファンドで構成するという手法が用いられている。

 例えば、日興アセットが設定する「グローバル・ロボティクス株式ファンド」は、国内のベビーファンドが、米ラザード・アセット・マネージメントが運用受託するマザーファンドに投資する方式となっている。

 一方、「グローバル・ダイナミックヘッジα」はファンド・オブ・ファンズ方式で、ラザード・アセット・マネージメントのケイマン諸島法人が2018年に設定したケイマン籍投信に日本籍投信が投資する。同じ会社による運用となるが、組み入れ銘柄は異なっており、商品としては全く別物であることが分かる(下図)。

 だが、アーク関連の投信は、ファミリーファンド方式、ファンド・オブ・ファンズ方式と形態は違っているものの、組み入れ銘柄は似通っているという実態がある。次ページで詳細を見ていこう。