そんな「日中アスリートの友情」に注目が集まれば、国内世論としても、この中国人選手への好感度も上がっていく、というのは容易に想像できよう。

「こんな中国人ばかりだったら、日中関係ももっとうまくいくのに」「いろいろ考えの違いはあるけれど、スポーツに国境はないな」という称賛の声がSNSやメディアで溢れ、この中国人選手を応援する日本人のファンまであらわれる。

 しかし、ほどなくして日本中が唖然とするようなニュースが飛び込んでくる。五輪閉会後、中国に帰国したこの選手が会見で、記者から「これから何をしたいですか?」と質問をされて、こんなことを述べたのだ。

「北京にある抗日戦争紀念館に行って、生きていることを、そして自分が卓球をこうやって当たり前にできているということは、当たり前じゃないというのを感じたい」

 この中国人選手に向けて、日本人はどのような言葉をかけるだろうか。「あの感動を返せ!」「やっぱり中国人はどこまでいっても中国人だな」など怒りの声にあふれるはずだ。この中国人選手のファンは「なんでわざわざそんなこと言うの?」と裏切られたと感じるだろう。

 そして、坊主憎けりゃで、この中国人選手との「友情」が注目された日本人選手にも「延焼」をしてボロカスに叩かれるかもしれない。そうなったら自分の身を守るため、この発言を批判をしたり、SNSをフォローを外すはずだ。

 ここまで言えば、筆者が何を言わんとしているかおわかりだろう。早田選手の発言は逆の立場だったら、「そりゃ、怒るわなあ」というものなのだ。