「はあ? 中国人や韓国人と同じ思考の非国民は今すぐ日本から出ていけ!」という怒声が全方向から聞こえてきそうだが、そうカッカッせず、落ち着いてその理由を聞いていただきたい。

「特攻」というのは中国人や韓国人だけではなく、日本人の中でも人によって受けるイメージはさまざまだ。これは危機管理の世界では「避けるべき危ないワード」とされる。イメージが十人十色ということは、発言が1人歩きして、受け取る側が好むストーリーが勝手に広まってしまうということでもあるからだ。

 わかりやすいのは、社会学者の古市憲寿氏だ。情報番組で早田選手の発言を受けた古市氏は「特攻があったから今の日本が幸せで平和だっていうのはちょっと違うなと思っていて」とコメントをした。早田選手を批判したわけではなく、「特攻」を都合よく美化する一部の風潮に苦言を呈したのである。

 が、これが炎上してしまった。「早田選手の言葉を曲解している」などと批判され、SNSで発言の真意をあらためて説明をするまでに至ったのである。

 つまり、「特攻」というのはこういう面倒なトラブルが起きることがわかりきっている「炎上確定ワード」なのだ。このまままっすぐいけばぶつかる「危機」があることがわかっているのなら、それは極力回避すべき、というのが危機管理の基本的な考え方である。

 では、どう回避をするのかというと、オーソドックスな手法は「言い換え」だ。「特攻資料館」という言葉が一人歩きしそうなので、これを別の表現にする。もしも筆者が早田選手のメディアトレーニング講師だったら、先ほどの回答をこのように「調整」することをご提案する。