これは歴史認識うんぬんということよりも実はもっとシンプルな怒りだ。「なんでこのタイミングで、わざわざこっちが嫌がる場所へ行くの?」「せっかくいい雰囲気で五輪が終わったんだから、もうちょっとこっちに配慮してくれてもよくない?」という、人間関係トラブルにも通じる、感情的な怒りと言ってもいい。

 ただ、ここで強調しておきたいのは、これは早田選手が悪いわけではないということだ。アスリートは競技やトレーニングに集中すべきであって、このような「配慮」はまわりの大人たちの仕事だ。つまり、彼女が所属する日本生命や、日本代表のスタッフがメディア対応の前に「こういう方向の話はしないでください」とアドバイスをするなり、メディアトレーニングなりをして、サポートをすべきったのだが、それを怠ったのが問題だ。

 「そこまで中韓に配慮しなくていけないのか」とイラッとする人もいるだろうが、五輪のアスリートであるのならば必要だ。

 ほとんどの日本人にとってオリンピックは「国別対抗メダル獲得競争」という認識だろうが、実はそれは大間違いだ。五輪憲章的には、五輪はあくまで個人やチームの競争であって、「国家間の競争」ではないとはっきり釘を刺されているのだ。国家同士でナショナリズム丸出しで争ってはいけないということは、歴史認識で対立する国の神経を逆撫でする「特攻」のようなワードもなるべく避けた方がいいということに他ならない。