社員が退職代行業者に駆け込む
「ブラック企業」4パターン

 ただ、ことはそう単純ではない。退職代行各社によると、単に「本人の性格や気質、日本的な義理人情のせいで言いづらい」というだけではなく、もっと根深い理由で「助けてほしい」と駆け込んでくる人も多い。その内容は、大きく以下の4つに分けられる。

(1)有給休暇を使わせてもらえない、公休日も仕事がある
(2)サービス残業が多い、終業後や休日にも会社から連絡がくる
(3)パワハラなどのハラスメントを受けた
(4)すでに退職を申し出ているが、辞めさせてもらえない

 アルバトロスの谷本氏は「有給休暇が使えないという理由は(ユーザーによる依頼動機の)上位に入る。有休を使えないのが会社の常識だったと相談者の多くが言う。実際に会社に連絡すると『うちの会社には有休はありません』と言われた。公休の日に休めないという相談もあったが、今の時代にこんな会社もあるのかと驚いた」と語る。

 有給休暇の付与はもちろんのこと、従業員に年5日の有休取得を認めるのは法的義務である。それが許されない組織は明らかにブラック企業だといってもよい。

 また、企業規模に関係なく、サービス残業も依然として多いようだ。

「超大手企業の支店で働いている方から『サービス残業が1日2時間、毎日続いているので辞めたい』という依頼を受けたことがある。ただ、こちらが本社に退職の意向を伝えると『大変申し訳ございません。残業代をプラスしてお支払いしますのでご納得いただきたい』と丁寧に対応された」(谷本氏)

 その上、パワハラなどのハラスメントも企業規模に関係なく横行している。「退職代行ガーティアン」を運営する東京労働経済組合の長谷川義人執行委員長は、そうした企業に退職手続きを要請した際のエピソードを赤裸々に語る。

「大手運送会社の社員が『上司にいつも暴言を吐かれ、辞めたいと思うが怖くて言い出せない』と依頼してきた。こちらからパワハラ上司に退職意向を伝えると、(長谷川氏自身も)いきなり『お前ら、クズが!』と言われた。辞めたくなるのは当然だなと思った」

 アルバトロスの谷本氏も「職場で『下僕くん』と呼ばれ続けた人もいれば、『生命保険をかけて自殺しろ』と言われた人もいる。胸やお尻を触られたり、LINEでプライベートな誘いをしつこくされたりした例もあった」と明かす。

 世の中では働き方改革関連法やパワハラ防止法が施行されているはずだが、いまだに順守しない職場もあるようだ。