退職届を3回出しても拒否された人や
入院中に退職代行に電話した人も

 さらに、「どんなに頼み込んでも辞めさせてもらえない」ため、退職代行業者に依頼してくる人も存在する。件数はそれほど多くはないというが、東京労働経済組合の長谷川氏は、実態を以下のように説明する。

「人が足りないことを理由に『新しい人が入るまでは辞められないよ』と言って引き留める会社が多い。(その後、退職希望者は)過酷な労働を強いられることになるが、そのうちに本人が病んでしまう。かなり追い詰められ、身動きが取れなくなった状態で依頼してくる人もいる」

 アルバトロスの谷本氏も続ける。「退職届を3回出したのに拒否された人や、退職させてくれと土下座で懇願したのに辞めさせてもらえなかった人もいる。『仕事中に倒れ、今は入院中です』と言う人から連絡を受けたこともある。この依頼者は休職中だったにもかかわらず、会社から『絶対に辞めさせない。早く復帰しろ』と言われていたらしく、入院中に退職を試みていた」。

 個人の性格もあるだろうが、ここまで社員を追い詰めるとは、法治国家の会社とは思えない所業である。

 もちろん「仕事が合わない」「上司が怖そう」といった理由で依頼してくる若者がいるのは事実だが、それだけではない。退職代行業者はこのように、「本当に切羽詰まった依頼者」の最後の拠り所になっているのである。