建設業者の倒産が増加に転じた。特に資材価格の高騰や人手不足の影響を受け、中小工事業者が行き詰まるケースが相次いでいる。2月8日には、投資用ワンルームマンションの建築工事を手がける「ユービーエム」(東京都)が、負債18億円超を抱えて東京地裁から破産開始決定を受けるなど、中規模クラスの倒産も発生している。(帝国データバンク情報統括部情報取材課長 内藤 修)

急成長のユービーエムが
自己破産した要因

 帝国データバンクによれば、2022年の建設業者の倒産は1204件を数え、前年を12.9%(138件)上回り、2008年以来14年ぶりの前年比増加となった。ここにきて、従業員や経営幹部等の退職・離職が直接・間接に影響した「従業員退職型」の人手不足倒産も目立つ。

建設業で「人手不足倒産」なぜ増加?帝国データバンクが“深刻な実態”を解説2月6日に自己破産申請に追い込まれたユービーエム(帝国データバンク撮影)

 都内や横浜市内を中心に事業展開していた「ユービーエム(以下、UBM社)」は、1991年10月に設立された。鉄筋コンクリート造りのアパートやマンションの新築工事を中心に、近年は投資用ワンルームマンションの工事に注力していた。個人投資家や不動産コンサル会社からの受注を増やし、安定した顧客基盤を構築。2015年4月期に約6億3500万円だった年売上高は、7年後の2022年4月期には約105億300万円にまで拡大していた。

 近時も受注は堅調に推移していたが、新型コロナウイルス感染拡大や資材価格の高騰の影響もあり、一部案件で工期の遅れが発生。2022年末には一部取引先への支払い延期要請が聞かれるなど、年明けにかけて対外信用が急速に悪化していた。

「1月30日に従業員に『自宅待機命令』が下りたようだ」――。翌31日から連絡難の状況に陥り、取引先からは「この売り上げ規模の会社で、いきなり連絡難とはめったに聞かない」との声も聞かれた。この時点でUBM社が受注していた工事は70件を超えており、下請け先や取引先も対応に苦慮するなか、2月6日、自己破産申請に追い込まれた。

 急成長中だったはずの建設業者が、なぜ倒産に追い込まれたのか。足元の資金繰りが悪化した要因のひとつとして「入金サイトと支払いサイトのずれ」が挙げられる。

 UBM社と施主との請負契約では、分割で建築代金を支払う旨が定められていたが、数年前から建物の完工時に(施主からUBM社へ)支払われる比率が高くなる契約が増え、その間のつなぎ資金負担からキャッシュフローが悪化していた。他方、建築資材の高騰で利益率が下落し、赤字工事が増加したことも収益を圧迫する要因となった。

 UBM社の破産申請書によると、同社元幹部A氏が手がけた総額6億円に上る赤字案件等も、資金繰り悪化の要因のひとつとされる。だが、当事者であるA氏は帝国データバンクの取材に対して「認識の異なる部分が多い。売り上げ6億円の会社を成長させようと思って力を尽くした。退社したものの、話し合って円末に退職したつもり。なのに『今になって』との思いはある」と語った。

 現時点で当事者間の主張が食い違っており、UBM社破綻の真相は定かでないが、今後の破産手続きの中で解明されていくことになるだろう。