ユニクロの賃上げを大手紙が報じるも…
検証なき経済報道は害悪だ

 そのユニクロが23年1月、従業員の給与を大幅に引き上げる、と発表した。

「日経新聞」は、「ファストリ(引用者注・ユニクロを指す)、国内人件費15%増へ 年収最大4割上げ」と見出しで掲げてこう書いた。

「ファストリ本社やユニクロなどで働く国内約8400人を対象に、年収を数%から約40%引き上げる。新入社員の初任給は月25万5千円から30万円に、入社1~2年目で就任することが多い新人店長は29万円から39万円になる」

 日本経済の長年の停滞の原因は、賃金の伸び悩みにあったのだから、これが本当ならば吉報だ。各社の報道も、ユニクロが賃上げを主導した、という方向で、諸手を挙げて歓迎した。

「日経新聞」は、社説で「ファストリの経営革新が生む賃上げ」と題し、このように持ち上げた。

「ファストリの賃上げは、日本の産業界に大きな刺激となる。とりわけグローバルで成長する企業と国内中心で業績が伸び悩む企業との賃金格差が改めて浮き彫りになった。今後さらに人材獲得の格差も生まれかねない」

 しかし、これは本当だろうか、という検証を行った記事を見つけることはできなかった。