国立大学の授業料は安すぎる?
慶応義塾長が引き上げを提言
慶応義塾長の伊藤公平氏が文部科学省の中央教育審議会(特別部会)で行った「国立大学は学費を150万円に引き上げるべき」という提言がきっかけとなり、大学の費用負担のありかたや国立大と私立大の公平な競争に関する議論が続いている。
伊藤氏の主張は、政府の国立大への手厚い補助金で国立大の学費が安くなっていることにより、高等教育の受益者負担が曖昧になっているだけでなく、優秀な学生の確保や研究で私立大は不利になっている。教育の平等や大学間の公平な競争のためにも国立大は学費を私立大並みに上げるべきということのようだ。
実際、6月には東京大学が授業料を現行規定の上限にまで引き上げる案を示し、多くの国立大が追随する姿勢を示している。自民党の教育・人材力強化調査会が5月に発表した文書でも、奨学金の充実とセットで国立大学の「適正な授業料」を許容する提言が行われている。
少子化で学生の確保が難しくなる中で国からの補助金が減らされ、国立・私立とも大学運営が厳しくなっているのは確かだ。
だが国立大の学費を私学並みに引き上げることが、大学間の公平な競争や社会貢献につながるのかどうか。それを目指すならむしろ重要な課題がある。