大学2022_劇変の序列・入試・就職#14Photo:PIXTA

コロナ禍による経済事情の悪化で、中退や休学に追い込まれる大学生や、進学自体を断念する高校生が増えている。そうでなくても貸与型の奨学金によって多額の“借金”を背負う学生の数は右肩上がり。だが、あまり知られていないだけで支援が手厚い大学も少なくない。そこで、特集『大学2022 劇変の序列・入試・就職』(全24回)の#14では、返還不要の奨学金制度を持つ、全国の主要大学111校を一挙掲載する。例えば、お金持ちの子女が通うイメージが強い慶應義塾大学にも地方出身者限定の奨学金制度があるのだ。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)

大学中退者が前年から増加
「経済的理由」が約2割を占める

 文部科学省は3月、2021年4~12月の国公私立大学と高等専門学校の中退・休学者数をまとめた。

 それによれば、中退者数は2万9733人と前年同期と比べて1087人増加。特筆すべきは、新型コロナの影響による中退者が1937人と、実人数で1.4倍に跳ね上がったことだろう。また、休学者数の方は、6万4783人と前年同期から887人減少したものの、こちらもコロナ禍を理由とする者は5855人と1.3倍に増えた。

 中退理由の2位は「経済的理由」で、全体の15.9%を占める。なお前年同期に「経済的理由」で中退した学生の割合は19.3%で1位だ。そして、休学理由の方では13.5%で依然トップとなっている。

 実際、コロナ禍という特殊要因を除いても、大学生の懐具合はほぼ悪化の一途をたどる。下の大学生(昼間部の学部生)の収入額の推移を見てほしい。

 まず総収入額は02~20年度の間に約14%下がっているが、より注目すべきはその内訳だろう。仕送りなど「家庭からの給付」が激減した一方、奨学金の額は1.6倍超に跳ね上がっている。

 ただし、この上昇は、奨学金の支給絶対額が増えたからというより、奨学金の受給率が上がっていることが理由だ。

 現役大学生や受験生の親世代が大学生だった時期に当たる1992年度の学部生(昼間部)の奨学金受給率は22.4%と、受給する学生は少数派だった。だが、20年度は49.6%とほぼ半分に達し、なんと大学院修士課程の院生受給率を逆転してしまった。

 そして、その多くは、奨学金とは名ばかりの日本学生支援機構による利子付きの「借金」だ。卒業と同時に数百万円の借金を抱える学生はもはや珍しい存在ではない。それでも首尾よく大手企業の正社員などに就職できればいいが、コロナ禍による就職戦線の悪化で、それもおぼつかない。

 もちろん、国も手をこまねいているわけではない。20年4月、経済的理由によって進学・通学を断念する学生を救うため、「高等教育の修学支援新制度」を導入した。

 低所得世帯に対して「授業料・入学金の減額または免除」と「給付型奨学金」の支援を行う新制度だが、その適用基準の間口は決して広いものではない。

 だが、奨学金制度は、日本学生支援機構や国の新制度によるものだけではない。全国の各国公私立大学は、受験生にあまり知られていないだけで、返還不要の独自の奨学金制度を持っている。そして、「高等教育の修学支援新制度」よりも適用基準が広く、かつ同制度との併用が可能であることも多いのだ。

 例えば、お金持ちの子女が通うイメージが強い慶應義塾大学でも、親の年収がよほど高くない限り、返還不要のお得な奨学金制度がある。

 また、大阪市立大学と大阪府立大学が統合して今年4月に開学した大阪公立大学では、府独自の支援によりかなりの世帯年収レベルまで、入学金と授業料が全学無償や減額となる制度がある。

 コロナ禍対策では、関西学院大学の日本唯一の奨学金制度「ヘックス型貸与奨学金」は、返還不要ではないが、学生の将来の負担が極めて小さい。実際、関学ではコロナ禍を理由とする中退者がほとんどなく、今年度も制度継続中だ。

 3大学の制度の詳細は次ページで具体的に解説するが、他にも大学独自の超お得な奨学金制度はあまたある。そして、多くが国の新制度との併用も可能になっている。

 そこで次ページでは、大学通信のデータを基に、一般入試と連動した各大学独自の返還不要の奨学金制度や予約型奨学金制度を設ける、全国の主な国公私立大学111校を一挙掲載した(円安と海外物価高の逆風が吹く海外留学向けの奨学金は、本特集の#19『“留学断念”が円安と海外物価高で急増!成績が普通でも「お得に留学できる大学」ランキング』参照)。

 地元大学のみならず、親元を離れて通わざるを得ない憧れの大学にお得な制度がないか、ぜひ調べてほしい。