悪戦苦闘する東大志望者の前に
立ちはだかる熱狂的早慶ファン

 二つ目の要因は、「早慶志望者との熱量に差があること」です。

 東大を本気で目指す人はやはり学力が高く、「共通テスト利用入試」でどこかの私大に合格をもらった上で2次試験に挑むケースが多くあります。共通テスト利用入試で早慶に受かる人は東大受験生の中でも限られますが、MARCHに受かっている人は少なくありません。
    
 こうした優秀層は、すでに一定以上のレベルの大学に進めることは決まっているので、私大に特化した対策を行う必要性は薄れます。共通テスト利用入試で早慶に合格していない場合も、「肩慣らし」として早慶の看板学部を1~2学部程度受けてから本番の東大受験に臨むのが基本的な流れになります。

 その結果として、「早慶の入試問題に対応できない」という事態が起きてしまうのは先述の通りですが、悪戦苦闘する東大志望者の前に立ちはだかるのが「熱狂的早慶ファン」の受験生です。

 早慶を第一志望とする受験生の中には、何としても志望校合格を実現するために、複数学部を「受けまくる人」が多くいます。早慶の入試に必要な科目だけを学び、早慶の出題傾向に特化した対策を行い、共通テストすら受けずに退路を断ち、少しでも合格可能性を高めるために多くの学部を受験するというわけです。

 科目ごとのバランスの良さや論理的思考力などの面では東大志望者に分があるものの、こうした早慶特化型の対策や「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」方式の受験戦略によって、早慶志望者が学力の差を覆してしまうことが往々にしてあるのです。

 ただ冒頭で述べた通り、早慶志望者が「肩慣らし」のつもりでMARCHを受けた結果、MARCH対策が不十分だったため不合格になるケースもあります。その実態については、本連載の過去記事『「MARCH全滅」なのに早慶合格!難関私大の受験で意外な逆転劇が起こるワケ』をご覧ください。