経済力があるために、別居や離婚が容易(それでも離婚は大変ですが)になり、結果として複雑な家族関係になっていることもあります。こうした状況では、相続の際に誰がどれだけの遺産を受け取るのかが問題となり、争いが発生しやすくなります。

 特に多額の資産(上場企業の自社株、収益不動産、儲かっている非上場企業など)を保有している方の場合、まさに「カネの成る木」「打ち出の小鎚(こづち)」を持っている状態です。ゆえに、前妻やその子どもたち、そして現在の家族との間で、会社の継承や財産分配を巡ってトラブルが起こることは少なくないのです。父の生前は表向き“小康状態”で特に問題がなさそうでも、「太陽」もしくは「重し」である父が亡くなるとパワーバランスは崩れ、揉め出します。

 相続争いを避けるためには、資産を築いた方(一般的には父)自身が遺産の分配について事前に計画しておくことが不可欠です。前もって問題を予見し、解決策を探ることが重要なのです。

 昨今の中東の紛争や、ロシアウクライナ戦争とも同じ理屈。アメリカの「重し」としての力が落ちてくると、その周辺国が我慢をしなくなるという世界情勢に似ています。相続においても、重しがいなくなれば争いが発生します。そうなる前に、今後の枠組み、セーフティーネットを作っておく努力が求められるのです。