生まれて初めて証言台に立つ

 裁判の論点は、労働実態に関する次の2点について。

 一つは、現役店長が、サービス残業を含む月間300時間以上働いていたのか。もう一つは、海外の委託工場で、午前零時を回っても残業が行われていたのか。

 書籍では国内労働について、匿名の現役店長の証言をこう書いた。

「繁忙期となると、今でも月300時間を超えています。そんな時は、タイムカードを先に押して、いったん退社したことにしてから働いています。本部ですか? うすうすは知っているんじゃないですか」

 中国工場については、17歳と18歳の2人の女性たちが次のように語った。

「特に先月(3月)は、午前零時や午前3時までの残業が何度もありました。でも次の日の仕事は朝8時に始まるから、ほとんど眠る時間がありません」

 ユニクロの急成長の裏には、国内外での過重労働があったというのが書籍の主張であり、ユニクロはそれを事実無根だとした。

 裁判の最大の山場は、12年12月に東京地方裁判所で行われた証言調べ。私は、生まれて初めて証言台に立った。

 当初、私の証言調べの時間は90分。まずは、「良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを誓います」という宣誓書にサインをした。

 このころ、私は緊張するというより、少しでも早く弁護士を含めたユニクロ側と対決したいという好戦的な気持ちになっていた。あれこれと難癖をつけてきた弁護士と対面してどちらの言い分が正しいのか白黒つけたかった。