なぜ連結が外れた?消去法で原因を絞り込むと……
なぜ連結が外れたのか?その原因として、最初に考えつくことは(1)物理的破損だ。密着式連結器では、ロックする部分のうち、半円柱の、相手の凸部の裏側に入ったところだけだ。連結器全体の中で、引っ張る力を受ける部分が意外にも小さい。金属疲労などでここが折れる、あるいは砕けると、連結は離れてしまう。
しかし、JR東日本の説明によると「当該車両の連結器の状況:外観に異常は認められませんでした」だから、物理的破損ではなさそうだ。
次に、(2)外部から大きな力が加わり、連結器が外れた疑いがある。例えば脱線事故のような衝撃だ。しかし、これもJR東日本によると「当該車両の車輪の状態:外観に異常は認められませんでした」とある。想定外の大きな力が働いたわけではない。
そうなると、(3)何らかの理由で半円柱が回転して連結器が外れた疑いがある。半円柱のレバーは前述の通り、シリンダーに空気を送り込むと作動する仕組みだ。空気を送り込まない場合は動かない。これも安全に考慮した仕組みだ。逆に、空気圧で連結を維持する仕組みにした場合は、空気が抜けると連結が解除されてしまう。
従って、もっとも疑わしい原因は、(4)何らかの原因でシリンダーに空気を送り込む操作が行われたことだ。空気の送り込みは運転席からの遠隔操作で行う。この遠隔操作は一定の速度以上では作動しないという。
「電子信号系が原因では」と思われる理由
人間による操作ではないとすれば、電気信号のノイズによるものかもしれない。外部からの電波、電気障害については十分に対策され、あり得ないことだと思うけれども、信号ケーブルの破損があり、誤信号を検知した恐れがある。
電気信号系のトラブルは、2019年6月1日に神奈川県横浜市の金沢シーサイドラインで起きた逆走衝突事故が記憶に新しい。この事故の原因は、列車の進行方向をモーターに伝える電線が断線したからだ。断線の理由はケーブルの取り付けの不備により絶縁体がすり切れたためだった。
もう一つ考えられるのは、当初から正しく連結されていなかった、という可能性だ。半円柱の作動部に異物が挟まり、正しい位置まで回転しなかった。JR東日本の資料では「出発駅(盛岡駅)での併合状態:併合作業は通常どおり行われました」とあるが、不完全な状態でも「正しく連結された」と電子機器が認識していた恐れがある。走行中の衝撃で、少しずつ半円柱が動いて、連結解除位置に達してしまった。
いくつかの報道で「電子信号系が原因ではないか」とされている理由は、上記のような切り分けによるものだろう。