連結解除時の非常ブレーキは、伝統的な安全装置

 分離した「はやぶさ」と「こまち」は、非常ブレーキが作動して停止した。これは鉄道では伝統的な安全装置だ。車両を連結するときは、車両同士の物理的連結の他に、電源ケーブルの接続と空気管の接続を行う。空気管は列車の編成全体でつながっており、一定の圧力が与えられている。圧力がかかった状態が「ゆるめ」で、圧力が抜けると「ブレーキ作動」となる。この仕組みによって、運転士は列車の各車両のブレーキを操作できる。

 古い車両では運転士が空気弁を操作して列車の減速を行っていた。現在は電子的に空気弁を操作する。もし、列車が分離した場合は空気圧か急激に減るためブレーキが強めにかかり、分離された車両は運転士や車掌がいなくても停止する。

 この仕組みは1869年にアメリカのジョージ・ウェスティングハウスが考案した。現在はほぼすべての鉄道が採用しており、新幹線だけが特別ではない。最近の例では、2023年に大井川鉄道で機関車と客車が分離する事故があり、ブレーキ管が外れて非常ブレーキが作動した。

 IT技術が発達し、なんでも電気的に制御できる時代になったけれども、鉄道では「連結器の半円柱のロック」や「空気圧」というアナログな機構が使われている。これは「伝統的だから」とか「古い仕組みを脱却できない」ではない。金属が噛み合う、空気が漏れるという性質がもっとも信頼できるからだ。

 電子機器が最優先、という考え方は鉄道にはない。