「歳をとった親が言うことを聞いてくれない」。誰もが一度はこんな経験をしているのではないでしょうか。「親がいつまでも自分のことを若いと思っている」「病院ギライがなおらない」「お酒の量が減らない」などその悩みはさまざまです。親のことを思って言ったのにもかかわらず、いつも喧嘩になってしまうのは、実は伝え方に問題があります。そんな問題を解決すべく、『歳をとった親とうまく話せる言いかえノート』が発刊されました。本記事では書籍の一部を抜粋してお届けします。
杖を検討してくれない
「お母さんもいい歳なんだから、そろそろ杖を持ったら?」。足元がふらつく場面が増え、転倒リスクが高まってくると、杖を持ってもらうという話が出てきます。そんなときのひと言です。
しかし、大抵は「イヤだ、いらない、大丈夫だ、みっともない」という返事が返ってきます。そうです、親世代にとって、杖は受け入れがたい道具なのです。
ですが、強情を張って、杖を使わずにいると、骨折して手術になる可能性があります。その場合、大体1~2ヵ月の入院と約3ヵ月のリハビリが待っています。さらに「転倒→骨折→入院・手術→寝たきり」となるパターンも少なくありません。
このようなケースの患者さんを担当したとき、私は、はつらつとした若者が「ノルディックウォーキング」を楽しんでいる写真をお見せします。これは、欧米諸国で国民の「3人に1人」が取り組んでいるスポーツです。
ポールと呼ばれる2本の棒を持つことで、全身の筋肉の約90%を稼働できるそうです。このように「年齢を問わず、誰もが楽しんでいる運動があるんだ」とわかると「杖=高齢者」という先入観から親は解放されます。その結果、あっさり杖の使用を受け入れてくれることが多いです。ぜひ、試してみてください。