ウクライナ軍による越境攻撃を、ロシアが「テロ」扱いする訳【佐藤優】ロシアのサンクトペテルブルクで、憲法裁判所のヴァレリー・ゾルキン議長と会談したロシアのプーチン大統領。2024年9月12日撮影 Photo:SPUTNIK/JIJI

ロシアのモスクワへ出張し、感じた現地の本当の様子――。市民の間に、閉塞感はない?なぜウクライナ軍による越境攻撃を「テロ」扱いするのか?作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏が読み解く。(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優、構成/石井謙一郎)

ベンツやBMW、新型のiPhoneも買える

 前回も触れましたが、8月の13~18日にロシアのモスクワへ出張しました。7月にイスラエルのテルアビブを訪れた際にも感じたことですが、日本にいて接する情報や報道だけでは、現地の本当の様子や、そこで暮らす人々の息遣いまではつかめないものです。

 モスクワの物価水準は、高級レストランが日本の五つ星ホテルと同じくらいでした。最高級の一つといわれるロッテホテルの和食レストラン「MEGUmi(メグミ)」では、握りずし8貫と巻き物のセットが約1万5000円。エビの天ぷらは約5000円。10本も盛られていましたが。一般のレストランは、日本の小料理店やフレンチの半額程度です。

 スーパーの食料品価格は、日本の半額から3分の1程度。西側による食料品輸入規制によって、食料品はほぼ国産に切り替わりました。品質の水準は高く、種類も豊富で、安価です。

 スターバックスやマクドナルドが撤退した後は、ロシア資本が引き継いでチェーン展開しています。マクドナルドの後継は「フクースナ・イ・トーチカ」(日本語で「おいしい、それだけ」)。ロシアは添加物規制が厳しいので、国産の食材で作られるこの店のハンバーガーはおいしいと、現地の友人たちは言います。ビッグマックにそっくりな「ビッグ・ヒット」(330ルーブル=約600円)を食べてみたら、評判通りの味でした。

 経済制裁による国産品への切り替えが進む一方で、外国製品を扱う店もあります。グッチやエルメスなどのハイブランドに、メルセデス・ベンツやBMWといった高級車、新型のiPhoneも買えます。禁輸されていても中東から迂回して入ってくるので、欲しい人は手に入るようです。

 モスクワ市民の平均的な月収は約8万ルーブルですから、日本円で14万円弱くらい。副業が可能なので、実際には14万~15万ルーブルくらいの収入があるようです。