「歳をとった親が言うことを聞いてくれない」。誰もが一度はこんな経験をしているのではないでしょうか。「親がいつまでも自分のことを若いと思っている」「病院ギライがなおらない」「お酒の量が減らない」などその悩みはさまざまです。親のことを思って言ったのにもかかわらず、いつも喧嘩になってしまうのは、実は伝え方に問題があります。そんな問題を解決すべく、『歳をとった親とうまく話せる言いかえノート』が発刊されました。本記事では書籍の一部を抜粋してお届けします。
「エゴvsエゴ」から戦線離脱しよう
私たち人間は、お母さんのお腹のなかで大きくなり、この世に産み落とされます。このとき、赤ちゃんには「私」という自意識がありません。ただ「人間の身体を持つ私」がそこに存在しているだけです。
しかし「魔の2歳児」とも言われる幼児期に入ると「ほかの何者でもない“自分”」という自意識が芽生えます。この自意識の芽生えによって「私はこれがしたい」「あれは嫌い」などの感情が湧き上がってきます。自分の思うように現状を変えたいと願う心とも言い換えられるかもしれません。
そして、多くの人と関わり、社会で生き抜くなかで、私たち人間には「エゴ(自我)」が芽生えるようになります。「自我」という文字が「自ら」と「手と矛」で表されている通り、戦う性質があります。大人はみんな「エゴ」の存在です。自分の立場を有利にしたり、より楽ができるように言葉を巧みに操ったりなどして、相手よりも優位に立とうとします。
そう、大人はみんな、自分がよりよい状態で生きるために、エゴを持ち、相手にエゴをぶつける存在です。親とのコミュニケーションでは、このことを理解するのが大切です。
したがって「人間誰しも『自分のエゴ』を突き通そうとする。私もそう。親も当然、エゴがあるから、自分の意見を突き通そうとする。それが当たり前なんだ、それが生来、備わっている本能なんだ」と考えてみましょう。
この事実を知っておくと、親とのコミュニケーションが劇的に改善します。「今の発言は、自分のエゴを突き通そうとしすぎていないか」と気づけるようになるからです。
そして、親の心情を慮った言葉が、自然と出てくるようになります。それが、親と子の「幸せな関係」を育む第一歩になります。