元金融庁長官の遠藤俊英氏が
ソニーフィナンシャル社長に就任
今年4月下旬、ソニーグループ傘下の金融持ち株会社であるソニーフィナンシャルグループが公表したトップ人事に、金融業界にどよめきが起こった。6月に、元金融庁長官の遠藤俊英氏が社長に就任すると発表したからだ。
遠藤氏といえば、2018年から20年までの2年間にわたり、金融庁長官を務めた大物官僚。退官後は、ソニーのシニアアドバイザーや富国生命保険の顧問、東京海上日動火災保険の顧問、少額短期保険会社ジャストインケースのアドバイザリーボードメンバーなどに就任していたが、「本命はどこか?」と、その去就は常に注目の的だった。
それが、まさかのソニーフィナンシャル。予想した金融関係者はほぼ皆無だった。
ソニーフィナンシャルの中核事業会社といえば、ソニー生命保険であり、遠藤氏が監督局長、長官時代にソニー生命のライフプランナー(営業社員)による金銭不祥事が多発。金融庁は立ち入り検査を実施し、厳しい検査を行っていた先だ。また、21年末には、ソニー生命の元社員が、海外子会社の資金約170億円を不正に送金して暗号資産ビットコインを購入、逮捕されるという事件も発生した。
度重なる不祥事に行政処分こそ出なかったものの、ソニー生命を中核とするソニーフィナンシャルの社長に遠藤氏が就任することに驚きの声が上がったのは、こうした理由からだ。
しかも、そのソニー生命の社長には、ライフプランナー出身の初の社長となった萩本友男前社長から一転、損害保険ジャパン出身の高橋薫氏が就任。隣接業界とはいえ、損保会社出身の社長誕生に驚きの声が上がったすぐ後のことだった。
さらに、今年5月、親会社のソニーが約4000億円を投じて完全子会社化したソニーフィナンシャルを、2〜3年後の株式上場を前提にスピンオフ(分離・独立)の検討を始めると公表した。
ソニーの持ち株比率を20%未満にすることで、23年度の税制改正で認められた、再編時の譲渡益に対する課税が軽減される「パーシャルスピンオフ制度」を活用(残りの株式約80%はソニーの株主に現物支給される)。ソニーブランドを利用できるようにした上で、グループ各社とのシナジー創出を継続していく方針が示されている。
こうしたソニーグループの金融事業の大転換に合わせて誕生した遠藤新社長。次ページでは、遠藤社長がソニーフィナンシャルだけでなく、中核事業であるソニー生命のライフプランナーについての本音や、分離・独立に向けた今後の方針などに対して切り込んだ。