この「不要なものを山に持ち込む」習慣は、時に危険な状況を引き起こします。先日の私にとって初めての2泊3日の山行では、重いリュックサックが原因で疲労困憊し、2日目の旅程では山小屋への到着が大幅に遅れました。その日は午後から天気が悪化しており、途中で雨や雷に見舞われていたら、最悪の場合、行動不能になり遭難していたかもしれません。登山グッズは軽量化されていますが、「ちりも積もれば山となる」の言葉通り、全てを合わせると相当な重量になります。これが時には命に関わる事態を引き起こしかねないのです。

 このような問題は、ビジネスの世界でも見られます。チェックリストは一度作成されると項目を減らすことが難しく、徐々に肥大化していきます。特に「念のため」「リスクを避けるため」と追加された項目は、「組織内で責任を取りたくない」との心理から削除されにくい傾向があります。

 肥大化したチェックリストは、本来の目的である「ミスを防ぐ」メリットよりも、業務の遅延や無駄な作業によるデメリットの方が大きくなります。例えばプロジェクト管理において、スタッフが重要なタスクに集中する時間が減り、結果として完了の遅れを引き起こすことがあります。

不要な作業が発生し
効率が低下することも

 また、過去に特定の状況に対応するために加えられた項目が、状況が変わった後も残り続けることがあります。こうした項目が増えると、現場のスタッフは不要な作業に追われ、効率が低下します。

 さらに、多くの事業を展開している組織において、全体で統一されたチェックリストを使用すると、部門やプロジェクトごとのニーズの違いに対応できず、不要な確認作業が発生し、生産性低下の要因となります。

 登山でもビジネスの世界でも、「念のため」の過剰な準備や肥大化したチェックリストを思考停止して使い続けることは、本来の目的達成を妨げる可能性があります。このため、適切な見直しと最適化は重要です。